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「一生」
啓介にかなりいっぱい食べられたけど、サツマイモ、美味しかった。
「そろそろ一旦戻るか~?」
先輩たちが言いだして、啓介を見る。
なんとなく、この旅行のスケジュールは、啓介任せになるんだなあと思いながら、啓介が頷いてるのを眺める。
……そういうば、いっつもこうだっけ。
なんか頼りにされちゃうというのか。自然と啓介に意見を求めちゃうというのか。クラスでも部活でも、いつもそんな感じだった気がする。
さすがに高校時代の先輩たちが居た時は、先輩たちが上に居た気がするけど……でもまあ、それでも、一、二年をまとめるのは啓介の役目だったもんな。オレにとっても、頼れる奴だったけど、皆にとってもだったなあと、改めて思い出す。
「どした?」
啓介の言葉に従って皆が宿に向かって歩き出してから、啓介がふとオレを振り返った。
「ううん。啓介、この旅忙しそうだね」
「別に、こんなん平気やけど」
ほんとにそう思ってそうな感じで、ふ、と笑う。
「食事の時間守ればあとは適当でええんやないかな」
「そっか。手伝うことあれば言って」
「あぁ。頼むわ」
「うん」
ふ、と見つめあって頷く。
旅館について、啓介が宿の人に呼び掛ける、そのまま裏にまわるように言われた。
行ってみると、広い芝生に、バーベキューの設備。
何だかみんなワクワクしながら近づくと、炭からの火起こしから始めるってことで、やり方も詳しい説明の紙が置いてある。皆大盛り上がり。だって普段やらないもんね。
協力しあいながら火を起こして、旅館から運ばれてくる食材を、色々焼き始める。
先輩たちはもうやお酒を飲める人達も居るけど、ほとんどの皆はジュース。
なんだけど、皆酔ってんのかなというはしゃぎっぷり。
どんなに騒いでも、周りは大自然なので、全然気にしないで居られるところが、最高にイイのかも。
「雅己食べてる?」
「食べてますよー」
先輩たちに言われて、ちよっと来い、と呼ばれる。
「なんですか?」
「まあまあ、座りな」
三人の先輩の近くの椅子を指されて、やまもり色々乗ったままの皿を持って、座る。
「なんですか??」
聞いたオレに、先輩たちは、ちょっとだけ顔を近づけてくる。
「お前、啓介と暮らし始めたんだって?」
「え。あ、はい。そうですけど……」
何でひそひそ声なんだろう。
「……やめといた方が良いんじゃねえの?」
「え?」
なんで?
「考えてみろよ」
「はい……」
「ただでさえお前ら仲良しすぎて、特にお前、彼女できたことないだろ」
「…………」
「モテそうなのに、それって、絶対啓介と居るからだと思うんよな」
「そうそう。話しかけにくいってのもあるし、お前の時間、啓介と使いすぎっつーのもあるんじゃねえの?」
……先輩たち、大学違うのに、まるで見てきたかのような……。
「その上一緒になんて暮らしちまったらさ」
「――――……」
「お前、一生彼女出来ないかもよ?」
……ちーん。
――――……なんかそのワードは嫌だ。
いや、啓介が彼氏な訳で、オレは今、彼女を求めてはいけないのは分かっているのだけれど。
でも、一生彼女出来ないとか。
……なんな訳。もう。
むすーっとして先輩たちを見ると。
あ、やべ、と、先輩たちは笑う。
やべ、じゃないっつの。
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