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「懐かしの」

   十分くらい歩いたところに、体育館があった。  体育館迄の間に、サッカーのグランドや、テニスコートなんかもあって、人も割といた。 「結構いるんだね、人」 「色んな宿の人がここらへん使うてるらしいから」 「集まってくるんだ、ここに。へー」 「明日は、違うバスケの人達も居るんやて。双方が試合したい感じなら、セッティングしてくれる言うから、とりあえず、もし向こうがしたいて言うたらって、さっき返事しといた」 「あ、そうなの?」 「こっちの皆は聞かんでも試合したいやろ?」 「うんうん、したい」  話しながら、啓介が、借りてきた体育館の鍵で、扉を開けた。  しん、とした体育館。  バスケのコートが小さく二面。縦に大きく一面とれるようになってて、なんだかちょっと懐かしい。 「……オレ、体育館、好き」 「ああ、分かる」  くす、と啓介が笑う。 「オレも、なんとなく、好き」  靴を脱いで、中に入る。 「ボール、出していい?」 「ええよ。体育倉庫に入ってるて言うとった」 「あそこかな」  奥に進んで、また扉を開いた。  ボールのカゴがすぐに目に入る。 「バスケのボール見ると、わくわくするよなー?」 「それも分かる」  クスクス笑いながら啓介も近づいてきて、ボールを手に取る。 「なんか、オレにとってバスケって、お前とやるもんやから。ずっと、高校時代も、一緒やったし」 「――――……オレとやるから、好きなの?」 「まあ。……バスケも好きやし、セットで雅己がついてる感じ。好きなもんが一緒に頭んなかに居るからなぁ……」 「セットって……」  啓介の言い方に、ちょっと笑ってしまう。 「でも分かるかも。……啓介とバスケすんの、好きだった」 「……ふーん」  ちら、と見られて、何? と聞くと。 「あの頃は、別にオレのこと、意識しとらんやろ?」 「……大好きだったけどね? 仲間だったかなあ」  くるくると、手の中でボールを回転させていると。  啓介が、すぐ隣に立った。 「――――……」  触れるだけの、キスをされる。  自然と伏せた瞳を開くと、啓介が笑う。 「ちょっと高校ん時、してみたかったなーと思うて」 「このシチュエーションでってこと?」 「そ。ちょっとええなー、場所」 「これ以上はダメだかんね」 「分かっとるよ」  ふ、と笑い合って、ボールを持ってコートに戻る。 「入るかなあ……」    スリーポイントシュートのラインに立って、少し集中してから、ボールを投げてみる。うまく、しゅっと音を立てて、ボールがゴールに吸い込まれた。 「やったー」 「おー、すごいやん」 「めちゃくちゃ、練習したもんなぁ……」 「せやな。それ、見とったなぁ……懐かしい」  「見とった、の?」と振り返ると、啓介は「見とったよ」と、クスクス笑った。   

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