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「見た目」

  「まあよう言うてるかもやけど……雅己が思うてるよりもずっと前から、オレは雅己を見てたと思うんよ」 「……ふうん」 「まあ最初の頃は、友達として、やったかもしれんけど……」 「……うん」  頷きながら、オレは啓介にボールをパスした。 「啓介もシュートして」 「ん」  啓介が何度かボールをついて、それから、ゴールに向けて、ボールを放った。すとん、と綺麗にゴール。 「……啓介のさ、シュートがカッコよかったからさ、オレ、スリーポイント、めちゃくちゃ練習したんだよ」 「そうなん?」 「言わなかったっけ? 悔しいから言わなかったのかなあ」 「聞いてへんと思う」 「そっか……」  啓介が返してきたボールを受け取って、弾ませる。 「啓介が転校してきて、初めてバスケ部に連れてった日にさ、スリーポイントのシュート、打ってみろって先輩たちに言われて、皆打ったけどさ。緊張したのもあって、皆外しちゃっててさ。オレも外して……最後に、啓介が打ったんだけど。……覚えてる?」 「覚えとらん……」 「……啓介だけが、入ったの。しかも、超綺麗なシュートでさ」  もう一度、ゴールに向けて、シュートを放つと、綺麗な弧を描いて、ゴールに吸い込まれる。 「なんか悔しくて。……だって、緊張するのとか、転校してきたばっかりの啓介が一番じゃん? なのにさ、啓介だけが入るとかさ。悔しいの分かるでしょ」 「……まあ、分かる」 「悔しいからオレ、すごく覚えてるしね。啓介は、ただ一本シュートが入っただけだし。覚えてないんだろうけどさ」  ボールを拾って、緩くドリブルしながら、啓介の近くに歩く。 「……だから、めっちゃ練習してたのは、お前のせいっていうか、お前のおかげっていうか?」 「そうやったんか」  啓介はクスクス笑って、オレを見つめる。 「そうでした~。まあ……悔しかったけど、あの頃から……カッコいいなとは、思ってたよ?」  ふふ、と笑いながらそう言うと、啓介は少し笑う。 「……てか、雅己は……」 「ん?」 「オレのこと、カッコいいとか思うてんの?」 「え?……まあ。……カッコいいは、カッコいい……でしょ」  ……そういえば、そんなに言ったことはないかもだけど。 「あんま聞いた記憶ない気がする」 「そう? ……何回かは言った気がするけどなあ?」 「モテていいよなあ、とか。そんなんは聞いた記憶はあるけど」 「そうだったけ?」  ちょっと思い起こしてみるけど。 「……悔しいから言わなかったのかも。カッコイイーとか、オレがうっとりするのも変でしょ?」 「……まあ、確かに……な、雅己?」 「ん?」 「オレの見た目、好みなん?」 「え。……何その今更過ぎる質問……」 「……今更やけどあんま聞いたこと無かったから」  はは、と啓介が笑う。 「……んー……」 「……別に正直に言うてええけど」 「…………特に今は……」 「ん、今は?」 「…………啓介よりカッコいい奴居ないんじゃないかと……」 「――――……」  つい正直に言ってしまったら、え、というびっくりした顔をされて、なんか突然、めちゃくちゃ恥ずかしくなる。    

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