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「バスケにぶつける」

「……今の、やっぱり無し……」 「……は?」 「今の恥ずかしいから、無しにして」  オレの言葉に、啓介は苦笑しながら近づいてくる。  体育館の出入り口を振り返ってから、オレの頬に触れて、出入り口に背を向ける感じで。 「――――……」  唇が、ゆっくり、重なってきた。 「……けい」  言いかけたオレの唇に、もう一度啓介がキスしてくる。  でもそれも、触れてすぐに離れた。 「あー。なんか……抱きたい」 「……っっ……」  むぎゅ、と抱き締められて、すぐにまた離される。  抱きたいって……。  ここ来て、まだお昼食べ終わったところなんですけど。  どんだけだ。 「……キスの仕方がさー」 「ん?」 「……カッコつけすぎで、恥ずい」 「……はー??」  啓介は、なんだか面白そうな顔をしながら、床に落としてたボールを拾い上げた。 「腹いっぱいで動けへんか?」 「大丈夫。オレ最後の方食べてなかったし」 「二人でやる?」 「やるやるやる!!」 「オレはもう性欲をバスケにぶつけることにする」 「うわ……」  ほんと恥ずかしいですね、啓介さん……。  もう、反応すると続くから、オレは、もうそうしてよ、とだけ返した。 ◇ ◇ ◇ ◇  啓介との一対一。  ……久しぶりにやったら、めちゃくちゃ疲れた。 「タイムー……水飲みたい……」  もーだめ、と体育館に倒れた。  啓介も弾んだ息を抑えながら、オレの近くに来て、倒れてるオレを見下ろす。 「皆が来る前に結構動いたな」  クスクス笑いながら、啓介は、オレに手を差し伸べてくる。  その手を取って、立ち上がる。  汗を、手の甲で拭いながら、オレは啓介を見上げた。めちゃくちゃ楽しかったので、笑顔になってしまう。 「啓介と一対一、すっごい楽しかったー」 「――――……」  やっぱりオレ、啓介とバスケすんの、好きだなーと言いながら、体育倉庫に足を向ける。 「ボール片付けて、いったん水飲みにいこーよ?」 「……ああ」  ドリブルしながら、体育倉庫に向かうと、後ろから、ドアを閉める音。  ん? と振り返ると、啓介が引き戸のドアをぱたん、と閉め終わったところで。 「何で閉めてんの?」  聞きながらも、体育倉庫にボールをしまってると。後からきた啓介も、自分の持ってたボールを片付けてから。 「?」  腕を引かれて、え? と見上げたオレは、体育倉庫の壁に背を、とん、と押し付けられた。 「けい……」  見上げると、唇が奪われて。  さっきとは全然違って、深く重なる。舌が絡んできて、「ん」と自然と声が漏れた。 「……ン、ん……っ」  なんか一気に本気モードのキスに、ついていけず、啓介のTシャツを握りしめた。 「……っふ…………ん……ッ……」  息を求めて、少し引いたら、また塞がれて、後頭部押さえられて、深く重なる。  ……性欲はバスケにぶつけたんじゃないのかようー!!  頭ン中は、それがぐるぐる回ってる。    

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