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「そーゆーとこ?」
「あっつー……」
風呂から出て、脱衣所の隣にある、休憩室。
からかってくる先輩達となんだかんだ、長話、しすぎた。少しのぼせたような感覚。
マッサージチェアみたいな、背中をすっぽり預けられる椅子に座って、天井を仰いだ。
「きもちー……」
目を閉じてると。
隣の椅子に座った啓介が、少し笑う。
「なんやそのまま寝そうやな、お前」
「……んー。このまま寝たら気持ちーなー……」
「夕飯食べんで寝てええの?」
「それは嫌」
即答すると、啓介はクスクス笑う。
「啓介、夕飯て何?」
「バイキング」
「わー、楽しみー」
「そう言うと思た」
言われて、そこで目を開けて、隣の啓介を見つめた。
「バイキング好き、なんて言ったっけ?」
「言うてへんけど、好きそうやなーて思うて」
「あ。予想?」
「せやな」
「バイキング好きそうって、どういうイメージ?」
クスクス笑いながらそう聞くと、なんとなくな、と啓介が笑う。
「なんや、楽しんで選んでそうなイメージがあるてことやな」
「そう?」
「ん。……まあ雅己は、いつでも楽しそうやから」
「そう?」
「ん。そうやで?」
啓介がすごくのんびりした声を出してて、なんか珍しーなーと思う。
やっぱり旅っていいよね。普段とは少し違う。
「なんか、良い気分で寝たくなっちゃうかも……」
「ええよ。少しなら。起こしたるから」
「いーの?」
「ええよ」
優しい声に、なんか本気でウトウトしてくる。
きもちー……。
「あれ、雅己寝てんの?」
……要の声かな。
どーしよ。眠いな……。
「少し寝かせといてやって」
啓介の、ひそひそ声がする。
……いっか。啓介に任せて、このまま少し寝よう。
そのまま、すぅ、と寝に入った。
◇ ◇ ◇ ◇
「……み……雅己……?」
「――――……ン」
ふに、と頬をつままれて。
でも、そのまままだ起きたくなくて、ウトウトしていたら。
「――――……」
ふわ、と唇に優しい感触。
……キスされてる……。と、そこで、はっと気が付いた。
がば、と起き上がると、目の前に啓介の苦笑。
「よう寝とったな」
「……っば、か、おま……」
「へいき、今誰も居らんから」
「……っほんとに?」
「ほんまほんま」
クスクス笑われながら、周りを見ると、確かに誰も居ない。
「もうすぐバイキングの開始時間やから、今風呂入る奴おらんのやと思うで」
「あ、もう、夕食?」
「そ」
「皆は?」
「一回部屋に戻ってる。オレらも戻ろや」
「あ、うん」
頷きながら立ち上がったところで。
「今ここ、誰もいない?」
「ん? ああ、そやで? さっき最後のおっちゃん、出てったし」
一応確認してから、啓介をくいくいと引っ張って、脱衣所の端っこの方にひっぱる。
「どした?」
「けーすけ」
胸元の服を、くい、と引いて、近づいてきた啓介に、オレは、キスをした。
「――――……めずらし。どした?」
クス、と笑って、啓介がオレを見つめる。
「……んー。あの。……なんか、皆さ、知らないから、色んなこと色々言ってくるけど……」
「ん」
「皆が言うのも分かるから、なんとも思ってないし……でもって、オレ、なんだけど」
「ん」
「……皆が今更、当たり前のこと言ったからって、そんな、ぐらぐらしないから」
「――――……」
「大丈夫、だからな?」
さっきからずっと、なんとなく言っておこうと思ったことを、告げると。
啓介は、少し黙った後、ふ、と微笑んだ。
「……オレ、お前のそーゆーとこ、めっちゃ好きや」
ちゅ、と唇にキスされて、そのまま、頬や額にもキスされて、そのまま、ぎゅ、と抱き締められる。
「……そーゆーとこって……??」
「まあ……色んなとこ好きやけど。まっすぐなとこ。ほんま好き」
ちゅ、と頬にキスされて。
まっすぐ?と思いながらも、なんか嬉しくて、ふ、と笑ってしまう。
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