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「自覚」

 バイキング。  美味しそうなものがたくさんあって、めちゃくちゃよそる。 「残すなや?」 「大丈夫、めちゃくちゃお腹すいてるー」  オレの山盛りのお皿を見て苦笑してる啓介にそう返して、空いてるテーブルに座る。  あ。啓介どこに座るか考えてなかった。……まいっか、ご飯の時くらい。  同じテーブルには、良たち高三の後輩達が座った。 「皆、受験すんの? 推薦? ていうか、エビフライ、うまーい」 「雅己先輩、聞くならまじめに聞いてくださいよ」  良に笑いながら突っ込まれる。 「あ、ごめん。そんで?」 「オレは推薦とれたら取ります」 「オレも。とれたら」 「オレもー」  まあ、まだ夏だからなぁ。秋までのテスト結果だし。「とれたら」っていうのはそのテスト結果でつく成績次第だから。 「結構基準厳しいもんなー頑張って。とれたら、また後輩だね」  ふふ、と笑うと、「まぁ、なんとか頑張ります」と笑い返しながら。 「でも、大事な夏にこんなとこ来ちゃってますけど」  笑いながら言う良に、オレも苦笑い。 「ごめん、誘っちゃって。……って、啓介が誘ったんだけど」  あははー、と笑いながらそう言う。「ノるお前らが好きだけど。落ちないでね」と言ったら、皆に「落ちるとかいう言葉ぶっぱなす先輩がどうかと思いますけどー」と突っ込まれる。 「あはは、ごめんー。明後日帰ったら死ぬほど勉強してください」 「え゛-明後日は無理。その次の日からで……」 「ダイエットが始まらない人みたいなこと言ってる」  ぷぷ、と笑うと、皆にジト目で見つめられる。 「先輩たちって、あんまり真剣に受験勉強してた記憶無いんですけど」 「失礼な。してたよ、一応」 「一応って」  笑われて、んー、と考える。 「でも内申とれれば推薦とれる感じだから……とにかく学校のテストは、頑張ってたよ」 「他の大学とかは考えなかったんですか?」 「えー……」  他の大学かー。附属もあるけど、一応進学校でもあったから、それもありだったんだけど。 「全然考えなかったかも……」 「そうなんですね」 「うん……」  そういえばなんも考えた記憶がない。なんでだっけ。  ……あ。分かった。  啓介と一緒に進めるし、もうそれでいいやって思った……気がする。  まあもともと、そのまま大学進めるってことで、高校の入試頑張った訳だから、それで良かったってのもあるんだけど。  一番は啓介だったかも。  ……まああの時は、友達と信じて疑いもしてなかったけど、啓介と四年間一緒に過ごせるの、楽しみでしょうがなかったもんな。 「大学、楽しいですか?」 「ん? あ、うん。楽しいよ。でもやっぱ、テストとかレポートとかそれなりに大変だけどね」 「サークルとかは入らなかったんですか?」 「うん。入んなかったな。まあ別にバスケの同好会とか入っても良かったんだけど……」  啓介があんまり乗り気じゃなかったような。  ……って、なんなんだ、オレ。啓介のことばっかりな気がしてきたぞ。  付き合う前から。  モグモグたくさんほおばりながら、なんだか、あんまり意識してなかったことを、思い出せば思い出すほど、あれれ?と不思議。  まーでもオレ、告白された時は、全然意味わかんなかったし。絶対そういう意味で好きだったわけじゃないのは絶対なんだけど……。  ふ、と笑みが浮かんでしまった。 「なんですか?」  たまたま良と目が合って、何で笑ったのか聞かれるけど。 「まあ、帰ったら、頑張って勉強しろよなー?」  そう言ってごまかした。後輩たちは、げー、と嫌そうに反応して、口々に「早く受験終わんないかなー」とぼやいてる。  何で笑っちゃったかというと。  高校ん時から、啓介のことが、絶対的に大好きだったこと。昔を思い出せば思い出すほど、自覚するし。  啓介はたぶん、そこまでオレが啓介を好きだったのは、知らないんだろうなぁ、なんて思ったら、ちょっと可笑しくなってしまっただけ。  

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