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「好きな気持ちとか」

 その後。皆が帰るといって、土産屋を通って帰ろうと動き出した時。 「雅己」  啓介に呼ばれた。 「ん?」 「向こうから帰ろ」 「川の方? ん、いいよ……二人で?」 「ん」  頷く啓介に、オレは頷いて、少し先を歩き出してた要に近づいた。 「ちょっと河原の方から帰る。皆と先に帰ってて?」 「んー、了解」  要が笑って頷く。  オレは、啓介の側に戻って、見上げる。 「いこ」  ふ、と微笑む啓介に、頷いて歩き出す。 「ていうか、二人きりにならないって言いながらさ、結構なってるけど」 「まあ。別にええんやない? オレらが仲良えのは、皆知ってる」 「そうだけど。どしたの? 何か話したいことある?」  そう言うと、啓介はちらっとオレを見て、クスッと笑う。 「沙希に迫られてたって聞いたし? オレもずっと若菜が居ったし。帰りくらいは一緒でええかなーと思うた」 「ああ……」  さっきの沙希の話。迫られたっていうのかなあ?  何だか笑ってしまいながら、さっきの沙希に言われたことを、啓介に言ってみる。 「あれって、迫られたっていうのかなぁ?」 「まあ、沙希がほんまにお前のこと好きなんは分かるな」  啓介は、ふ、と笑う。 「なんでも一生懸命で、楽しそうなとこって。めっちゃ分かる」 「そう? ……ていうか、皆も一生懸命だし、楽しそうだよね?」 「まあそうかもやけど……雅己はそれがなんや可愛いからな」 「――――可愛いって……」  苦笑い。 「沙希とオレが、お前を見る視点が同じちゅーのがちょっと笑えるけど」 「……うん、そーだね。なんか可笑しいなって思うのは分かる」  ふふ、と笑ってしまうと。  啓介は、んー、とちょっと考える素振り。  歩いている河原は、真っ暗で。  近くにいるから顔が見えるって感じ。静かだから、オレと啓介の声も、すごく小さくて済むし、なんだか自然とゆっくりになる。 「でもな。そうなると、沙希がお前を好きなんは、本気やろなーて思う」 「それは、啓介と同じ視点だから?」 「ん。ちゅーか……明るくて楽しそうなお前と、一緒に居たいって思うんやろうなーって。側に居たいとかそういうん、強いんやろうな」 「そうなのかな……。まあでも、オレ、好きな人がいるとは言っといたからね。来年の三月の時に、告白するかは決めるって。オレが好きな人を好きなままなら、断るからねって言っといたよ」 「沙希はなんて?」 「沙希の返事は……オレを好きなら告白するけど、他に好きな人が出来たらしないってさ。まだ半年も先だから、分かんないって」  そう言うと、啓介は、ぷ、と笑う。 「沙希、ほんまおもろいな」 「うん。面白いよね」  何だかクスクス笑ってしまう。 「まあでも三月ってそんな先やないし。別れる訳ないから、沙希には悪いけど。諦めてもらわんと」 「そのセリフ、若菜にもだよ。……若菜が啓介好きなのは、真剣だと思うし」 「――――……せやな。断らんとな」 「……可愛い後輩たち、だけどねー」  なんとなく、ちょっと黙る。  好きって言ってくれるのを断るのって、やっぱり、ちょっと、辛いよなあ……。 「……まあでも、オレら、彼女居ないて言うてたら、この先も多分、こういうんは、あるよなぁ? 結構モテるし。オレら」 「自分で言うなよなー。オレはそこまでモテないし。啓介と一緒にすんなー?」  クスクス笑って言うと、「気づかんだけやんか」と啓介は苦笑い。 「つか、オレ、そんな鈍くないしー」  べー、と舌を見せると、啓介は何か言いかけて、笑いながら首を振った。 「ま、ええわ。気付かんのは、それはそれで都合ええし。って前もこれ言うたな」    啓介はクッと笑いながら、オレを見つめる。

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