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「一日目終了」

 皆とカラオケ、久々。  人のに合わせて皆で歌ったり、時たま喋ったりで、大騒ぎ。  楽しすぎる。 「次誰―?」  歌い終わった奴が言うので画面を見ると。 「あ、次啓介ー」  オレが言うと、マイクが啓介に回ってくる。 「あっちに立って歌えば?」  先輩が言ったけど、「えー、ここで歌ってよ」とオレが言うと、ちら、と啓介に見られて。啓介は座ったまま歌ってくれることになった。  カッコいい曲。  啓介の声にぴったり。……大好きだなー歌う声。  歌もうまいって何なの、って昔思ったよなぁ……。  一曲たっぷり楽しんで。しかも真隣の席で、ナイス。  なんて思って、歌が終わると同時に大拍手をしていたら。  一緒に皆も拍手してたんだけど。  なんか若菜がすっかり、「先輩カッコいい」みたいな顔になってるのを目撃。  あ。……このカッコいい歌、歌わせなきゃよかったかなぁ。  めちゃくちゃ、好きって気持ちを上向かせてしまったかもとか思いつつ。  なんか分かる、若菜。  今の歌ってた啓介、カッコいいよな……すっごい分かる。  なんだか、ちょっと同士みたいな気分が芽生えてしまいそうだけど、なんかそれも違うよなぁ。オレ多分、若菜にとったら、恋敵みたいな立ち位置だし。  でも、啓介のこと好きな気持ちは、語り合いたいくらい。  お互い片思いとかだったら、めちゃくちゃ話したかなぁ。……ってないか。  オレ男だし。そんな女子たちみたいなことは出来ないか。  啓介の次、自分の歌を歌いながら、頭の中は、そんなあほな感じのことばかり。歌い終わると、啓介が、ふ、と笑う。 「めっちゃええな」  そんな言葉に、ん、と嬉しくて、笑い返す。マイクを次の奴に回して、しばらくは歌ったり話したり、していたのだけど。  その内、なんだか、大きなカラオケの曲と歌すら、子守歌に聞こえきた。 「――――……雅己?」  すぐ近くで呼びかけられて、ん、と見上げると。近くに啓介の顔。  うわ、びっくりした。と思ったけど、すぐに、自分が啓介に寄りかかって、ウトウトしてたことに気づいた。 「寝とった?」 「あ、うん。今寝てた」 「こんな音デカいとこで、よぉ眠れんなぁ?」  クスクス笑われて、苦笑い。 「何かいま、指の先まで眠い感じする……」  ぼー、と啓介を見ると、ぽんぽん、と頭をなでながら、啓介が立ち上がる。 「オレら先帰るわ」 「どしたー?」 「雅己がもうダウン。ほら、立てや?」  啓介がオレの腕を掴んで、引く。立ち上がって、啓介と一緒に、皆の前を抜けて、ドアのところで振り返った。 「おやすみー」  言うと、皆、「死ぬほど眠そうじゃん」と笑うけど。  ……確かに超眠い。 「明日試合するかもやし、皆も早めになぁ?」  啓介が言って、皆がわーと何か返事をしてて、そのままドアが閉まった。 「あれは寝ないやろな……」    苦笑いの啓介が、オレの背中に手を当てる。 「こっちはすぐ寝そう」  クスクス笑ってる啓介の声が優しい。 「ごめん……啓介まだ居たかった?」 「お前が行く言うたから来たんやし。もうお前歌うの聞いたから、ええよ」 「……はは。何それ」 「オレお前の歌う声、好きやから」  ……まったく同じことさっき思ってたような。  ふ、と笑ってしまう。 「オレも好き。啓介の歌」 「……そか」 「うん」 「……楽しい? 旅」 「うん。すごく」  応えると、啓介は、笑いながら、オレの頭を撫でてくる。  なんか。ほこほこしながら、部屋に戻り。  さっき寝てて、目が覚めて話してた人達に、すげー眠そうと笑われながら迎えられる。  あくびを繰り返しながら歯を磨き終えると、布団に吸い込まれた。  隣の布団に入った啓介をうとうと見ながら、あっという間に眠りについていた。  旅、一日目、終了。  

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