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「いい日に」

「啓介、そういうの強すぎだから、中高生とおんなじで、いいんじゃない? スポーツで健全に発散したほうが」 「ほしたらやっぱ、よそと試合がええなあ。仲間同士で試合するより、断然盛り上がるよな」 「うんうん。オレも、啓介と同じチームで試合できるの、すっげー楽しいし。な、向こうの人達、いつこっち来るんだろ。午後、出来るかな?」 「昨日、チェックインは午前中やて言うてたで?」 「そっか、早く来たらいいなあ。あ。相手のチームが来たら、啓介が交渉に行く?」 「ん、行くと思う」 「じゃあついてく」 「ん」  頷いた啓介にオレも頷いて、はー、と上向いて、目を閉じる。 「朝の温泉て何でこんなに気持ちいいんだろうー」 「ほんまやなー? 近くに温泉あったらええのにな」  うんうん、と頷いていると。ふ、と啓介が笑う。 「……あれやな。いつかなんか、田舎に住むのもええな?」 「ん? 田舎に?」 「そ。お前と二人で、田舎に住むのもええなーと思って」 「んー。じゃあ、なんか仕事考えようよ。田舎とかでもできる仕事。ネットがつながればできる仕事とか、田舎でもできる仕事」  オレがそう言うと、啓介はクスクス笑って、「乗り気なん?」と聞いてきた。 「うん。本気でいいなと思う。星が綺麗で、温泉あって……幸せだよね」 「せやな。大学で勉強してる間にいろんな仕事 考えよか」 「うん。オレ、お前とだったらさ、何か会社作るとかそういうんでもいいよ」 「楽しそうやな」 「楽しいよ。絶対。啓介と一緒だもん」 「……なんか、やたら素直やな、今日」  そう言われて、そう? と言ってから、そうかもね、と笑ってしまう。 「なんかいいとこに居ると、素直になるかもー」 「……ほしたら絶対田舎に住も」  クスクス笑って啓介がそんな風に言うので、オレも笑い返す。 「でも最近わりと、オレ、なんでも普通に話してると思うけどな」 「……まあ、せやな。ちゅーか、お前はいつもなんも考えず、まっすぐやったけど」 「なんだよ、なんも考えずってー。失礼」  むむーと、啓介をじっとり睨むと、「何も考えず煽ることめっちゃ多いし……」と笑う。 「……勝手に煽られてるだけじゃん?」 「まあそうかもしれんけど」  「んー……露天いこっか? おじちゃんたち出てったし」  今続けて大浴場を出ていったみたいで、露天も人が居なくなった。   「ん、行こーや」 「うん」  ざ、と湯から出て歩き出す。 「温泉て、離れて雅己の体見れるからええなー?」 「…………変態」 「そんな嫌そな顔せえへんでも」  ケラケラ笑う啓介に、ぽんぽんと優しく頭を叩かれる。 「ていうか、今更じゃん。……いっつもだし」 「ん、まあそうなんやけど。そういうのとはまた別やなー」 「……そのこだわりっぽいのが変態っぽい」  笑いながら言うと、啓介も、まあ否定はしない、と笑う。 「ていうか、否定して」 「……せえへんかな」 「あ、そ」  苦笑しつつ、露天のお湯にまたつかる。  見上げると、青空。  今日も楽しい、いい日になりそう。   

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