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「卓球☆」

 めちゃくちゃ、目玉焼き、美味しかった。  他のご飯も。  もうホクホクで、ごちそうさまをして、とりあえず部屋に戻る途中。  卓球台を発見。昨日から何度か見えてたんだけど、使ってる人達がいたからあえて、やろうとは言わなかったんだけど。今、誰もやってない。 「けーすけ」  じっと見つめて二ッと笑うと、啓介は呆れたようにオレを見つめる。 「腹いっぱいて言うてなかった?」 「だから、動きたいだろ?」 「……気持ち悪うならん?」 「なんないよー。卓球ってそんなに動かないだろ?」 「はいはい。フロントに聞いてこよ」 「うん!」 「オレ言ってくるから、お前は、卓球やりたい奇特な奴集めとけや」 「えー、啓介やんねえの?」 「やるわ。他に、や」 「はーい」  はは。やってくれるんだな、……嫌そうだけど。  ぷ、と笑いながら、通りかかる皆に声をかける。 「食べたばっかで卓球なんて無理ー」ていう奴もいるけど、「やろやろ」ていう奴もいる。  啓介が、ラケットが入ったカゴを借りて帰ってくる頃には人も集まってたし、ギャラリーは卓球台の近くの椅子に座ってこっちを向いてる状態。 「ダブルスでやろうよ」 「ええよ」 「じゃあぐーばーで!」  言ったら、啓介とオレはグーで同じチーム。 「やるからには、勝つからな」  啓介がニヤ、と笑ってオレを見るので、当たり前じゃん、と言うと、周りのみんながどっと笑う。 「啓介と雅己、超本気だぞー、負けんなよー」  相手の先輩たちに、皆が口々に声をかけている。  フロントから少し奥まった広いスペースの中央に二台の卓球台が設置されている。オレ達の台はダブルス。隣の台では一対一で戦うみたいで、二台とも、妙に盛り上がっている。  勝負スタート。  オレのサーブから。久しぶりに打ったボールは、勢い良すぎて、ポーンと飛んで行った。皆が歓声や笑い声をあげてくるので、苦笑い。 「ごめん、啓介―」  言うと、啓介が可笑しそうに笑う。  次はラリーになった。 「あれっ、これって啓介とオレって、交互に打つんだっけ?」 「どっちでもええんちゃうの?」 「えっあ、うわ!!」  いい勝負だったのにへんなこと気になったせいで、ボールがまためちゃくちゃ飛んで行ってしまった。取りに行こうとしてくれた啓介に気づいて、走り出す。 「啓介、いい、オレ取ってくる!」  なんか卓球って意外と動くかも。ていうか、啓介も皆もかなり真剣だからな、なんて可笑しくなりながら、ダッシュでボールを追いかけていくと、ちょうどフロントに、団体さんが到着したところみたい。卓球ラケットを持って駆け寄るオレを、その人達は何気なく見てくる。  ……あ。なんか、バスケチームっぽい人達……。別にバスケの道具とか持ってるわけではないんだけど、何だかそれっぽいなと感じる。  もしかして、この人達が今日、試合を申し込もうとしてる人達かな?  と、思ってオレが足を止めた時。  オレの追っかけてたボールをひょい、と拾った一人の男が、オレに近づいてきた。 「はい。これだよね?」  背が高い男が、オレにボールを差し出しながら、笑顔でそう言った。 「あ、うん。ありがとう」  受け取りながら、今話せそうかな? と顔を見上げる。 「あの」 「はい?」 「今日って、バスケ、したりしますか?」 「え。あ、うん、体育館でするけど」  あ、やっぱり。啓介、呼ぼ。  ボールを握り締めたまま、啓介を振り返る。

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