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「あーもー」

 皆で魚釣りを楽しんだ。まあオレは、虫とはずっと戦ったけど……。  釣れなかった奴も居たけど、いっぱい釣れた奴も居て、人数分は確保できたので、その魚を、食べるお店に持って行く。そこでさばいてくれて、焼いてくれて、焼き魚定食として、食べられるんだって。すごいー!   今までで一番、わくわくする、焼き魚定食。  お店の中に入って、適当に散って座った。今回は、啓介、隣に座った。  目の前に運ばれてきた定食は、塩焼きにした魚と、ごはんとみそ汁とお新香。すごくシンプルなんだけど。皆、おー、と嬉しそう。魚もなんだかすごくこんがり焼かれてて、美味しそうだし。 「――――……」  魚に、なんだかいつもよりもちゃんと、手を合わせてしまう。  だってついさっきまで生きてたんだもんな。  いつも食べてる魚とかもこうやって獲られてるんだろうけど、でも、なんか、いつもよりももっと、命、みたいなのを実感するなぁ……。  なんとなく目をつむって、いただきます、と言ってから目を開けたら、ふ、と隣から笑う雰囲気。 「……ん?」  啓介を見ると、口元に、軽く握った手を当ててる。 「なに?」 「……お魚さん、ごめんね、ありがとう、みたいなこと、今思った?」 「いや……んー。まあ、似たようなこと思った」  言うと、ふ、とまた笑う。 「何で笑うんだよ」 「いやもうなんや……ほんまかわええなーと思うて」  わーバカバカ、皆の前でかわええとか言うなー!!  と思った瞬間。一緒のテーブルに居た皆が、わっと笑った。 「ほんと先輩可愛い……」 「まあ気持ちは分かるけど。オレらが釣ったんだし」 「にしても、なんか雅己って……素直に育ってるよなー」  なんか知らないが、めちゃくちゃ可愛いと言われて、クスクス笑われる。  啓介の可愛いに焦ったオレなのだけど、誰もそれを気にはしていなかった。 「つかなんなんだよもう、皆もちゃんと手ぇ合わせろよ」 「……お魚さんに?」  クスクス笑う啓介。 「そーだよ!もう」 「ん。せやなー」  なんか知らないがすーごくふんわり微笑んでから、ちゃんと手を合わせて、いただきます、と啓介も言って、それから皆もそうした。  なんだかすごくワクワクしながら魚を口にすると。  皮はパリパリに焼けてすごく香ばしいし。身はすごくふっくらしてるし。塩味ですごく素朴なんだけど、ほんとおいしい。  啓介を見ると、ふ、と笑って、「うまいな」と言う。うんうん頷く。  新鮮だからなのかな。頑張って釣ったから?  命をいただきますって、ほんとこういうことだよね。  もう全人類、これ経験した方がいいよな。うん。  とか、良く分からないことを思いつつ、夢中で食べ終わった。 「おいしかった。ごちそうさまでした」  手を合わせてそう言うと、啓介がまた、ふ、と笑う。 「また来たいな?」 「うん。また来よって……今終わったばっかりなのに」  クスクス笑ってそう言うと、せやな、と啓介は笑う。  皆が食べ終わって、店を出ると、啓介が、くい、とオレを引いた。 「ん?」  振り返って見あげると。 「また来たい言うたんはさ」 「うん?」 「お前がめっちゃええ笑顔やから。そう思うたんやで?」 「――――……」 「ほんま。可愛えし」  クスクス笑った啓介に、ぽんぽん、と頭を優しく叩かれる。 「あーもー。ほんま、キスしたい」  ぼそ、と耳元で囁いて、オレの横を歩き去る。  ぼっ、と熱くなる。もうなんか、いっぱいキスしてるのに、なんかこういう、不意打ちのとかは。全然慣れない。  あーもー。って。オレのセリフだし!! もうもう! 「雅己ー行こうやー?」  クスクス笑いを含んだ声でオレを呼ぶ啓介に、もー、と照れ隠しで怒りながら、歩き出した。    (2024/3/6) あとがき。 今気づいたんですけど、何の魚か種類書かずに来てしまった(笑) 日本の川ですぐ食べられる魚って……アユかなあ? ヤマメかなあ?? ……(´∀`*)ウフ

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