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「呼ぶ声」

 一ゲーム終了。  うちの勝ち。 「やっぱこれって、現役のスタミナに負けた気ぃする……」  志門たちが苦笑しながら、どか、と体育館の真ん中に座った。  熱いし疲れてたしで、オレ達もそれぞれ横になったり、座ったり。  オレは大の字に転がった。 「……すげー真剣に走った」  そう言ったら、隣にいた志門に、くすくす笑われた。 「雅己が、けーすけ、て呼ぶのが聞けて、感動した」 「……感動って変だけど」  オレが苦笑すると、志門の周りの奴らも、「ある種、感動」と笑う。 「あ、なあなあ、チーム、シャッフルしない?」 「シャッフル?」 「そう。適当に入れ替えて、遊ぼう」 「はは。面白そう。いいね」  ね、と寝っ転がったまま、皆に視線を向けたら、「良いけど、もうちょっと休憩~」と苦笑してる。 「雅己、オレと一緒になろうよ」  志門が不意に言ってくる。ん?と顔を見上げながら、体を起こした。 「いいけど。え、指名制なの?」 「いや? なんか雅己に、名前呼んで欲しい」 「志門ー!って?」 「あ、オレもー!」 「え、名前、何?」 「そうし!」 「そうしね」 「オレもー」 「は? オレそんな名前覚えらんないし! つか、チーム決めてからにしようよ」  オレがしかめっ面で言うと、良たちが、不思議そうな顔でオレを見てくる。 「何で、雅己に名前呼んで欲しいとか、なってんの?」 「ああ……」  啓介がすごい苦笑いでオレを見てくる。  わーわー、言うな言うな、と思ったら啓介は、ぷ、と笑って口をつぐんでる。はー、よかった、と思った瞬間。  志門が、良たちに笑い出した。 「高校ん時の大会でさ、オレら、雅己が「啓介!!」ってめっちゃ呼んでるの、すごい見てたの。なー?」 「そうそう、あの感じで呼んで欲しいなって思っちゃうほどだったよなー?」  と。志門その他が、楽しそうに、オレのチームメイトたちにあれこれ話してる。  なるほどね、確かに呼んでた呼んでた、と大笑いの皆。 「他のチームにまで認識されてるとか、すげーな、雅己」 「うるさいなーもー、オレの声がよく聞こえるって話だろ。ていうか皆も名前呼んでたでしょ」  むー、と膨らんで言うと、志門たちが可笑しそうに笑う。 「そうそう、そんでもって、オレら、次の試合相手として、結構真面目に見てたから。余計だったけどね」  クスクス笑ってる志門たちに、もー言うなよーと文句を言うと。 「ていうか、今更じゃん」 「そうそう、今更。皆知ってるし」  仲間たちの言葉に、はーと、ため息。  啓介は可笑しそうに笑いながら、「どーやってチーム分ける?」と志門達に話しかける。  もー……結局皆にも、オレの「啓介呼び」が、全然知らないチームの中で有名だったの、バレたー。超恥ずかしいし。もー。  今更と言って、皆が特別気にしてないのも、なんかそれもまた逆にどうなの?って感じがするし。  はーやだやだ。はず!  ぷんぷんしてると、啓介がちょっと近づいてきて、オレに何か言いたげ。 「ん?」  耳を寄せると。 「オレを呼ぶみたいに、他の奴呼ぶなや?」 「え」 「えーな」  言いながらオレをじっと見つめてから、啓介はまた離れていって、何やら話しているけど。  もー、なんなの、ほんと!  笑ってたくせに、妬くなよー! もー!  意味分からん。もう。

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