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「おそろい」

 もーほんとにーもー。  大体にして、こうなんか、かっこつけすぎっていうかさー!  カッコいいことしすぎッていうかさー。  ほんと悔しい。  花火を片付けながらも、まんまとドキドキさせられて、ぷんぷんしてると。 「なんでふくらんでんの?」  皆がオレを見て可笑しそうに笑う。 「別に」  啓介がカッコよすぎて、ムカついてきた、とか。言ったらなんて言うんだろう。啓介のこと好きすぎなー、とかまた言われて、笑われるだけかもしれない。  そうだけど。  ……高校ん時から、一番好きな奴だった。  それがなんだかんだと色々してる内に。  そういう意味でももう、すっかり大好きになっちゃってて。  ……多分。  啓介が、その意味でオレに好きだって言わなかったら、オレはきっと、大親友って言ったまま、啓介と居たと思うけど。  ……もう今となってはそんなのは、昔の話で。  今は、もし啓介がオレを好きじゃなくなったとしても、オレは啓介をそういう意味で好きで、ただの友達になんか戻れる気はしないし。  人生で、彼女欲しかったなぁ、とは思う自分はちょっとは居るんだけど。  でも、啓介が居なくなるうえでの、彼女なんて、別に要らない。  もう分かってるんだけど。  啓介のことが、恋愛の意味で好きだし。  キスされたり、抱かれたりするのももう、オレ自身も望んでるし。  でもでも、やっぱ、あまりに簡単に、きゅんってさせられると。  はー。ちょっとくやしーけど……。  いつのまに、こんなに、好きなのか。って話。    「花火のごみ置き場」という看板のところにごみを集めて、解散になった。旅館まで皆で喋りながら歩いて、志門たちと別れた。  今日はカラオケは行かずにしゃべろうってことになって、皆適当に別れて順番に温泉に入ったり、テレビ見てたりまったりする時間。 「雅己、ちょっとおみやげ見に行く?」  お布団に転がってたオレが、その声に顔を上げると、啓介と要が笑いながら見下ろしてきてた。 「あ。行く行く。夏休み、実家帰ると思うし」  ぱっと立ち上がって、二人と一緒に部屋を出て、フロントの階まで下がる。  お菓子がいいかなあ、漬物とか、ご飯のお供みたいなのとか。うーん。  何がいいかなと、あれこれ見ていると。 「雅己」  啓介が寄ってきた。 「なんかおそろいで買う?」  そんな風に言われて、ほー、と啓介を見上げる。 「うん。いいよ。買お」  ふ、と笑うと、啓介も微笑む。「何がええ?」と聞かれるけど。 「んー。おもいきりお揃いは目立つからなぁ」 「せやなぁ……」 「あっ!」  そうだ、さっき良いの見つけたんだ。「啓介こっちこっち」と、啓介を案内した。 「鍵にさ、お揃いでつけない?」  天然石と鈴がついた鍵のキーホルダー。綺麗だなと思いながらも、家族のお土産にはなーと思いながら通り過ぎたんだけど。 「ええな。そうしよ。ほしたら、オレ、雅己の買う」 「じゃあオレは啓介の買ってやろうかなぁ」  ふっふっふー、と笑いながら、そう言うと、啓介は面白そうにオレを見て、くしゃ、と髪を撫でた。  もー。すぐ撫でるんだから……。  思いながら自分の頭に触った時には、啓介はオレを振り返りつつ。 「もうオレ決まったから、先、買うてくるわ」 「ぁ。うん」  何となくその背中を見送って。それから、手に持ったキーホルダーに目を向ける。お揃いか。……そういえば、まだなかったかも……?  しかも、これにつけるのは、同じ部屋の、同じ鍵。  ……ふわ、と嬉しくて。    ほんと。いつのまに、こんなに。好きかな。  自然と、顔が綻ぶ。   (2024/7/3)

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