242 / 244

「筋肉痛……」

 アスレチック開始!  簡単なコースと難しいコースに分かれてて、並列だったり少し離れたり。なんとなく皆で同じように進んでいく。当然オレ達男子はほとんど難しいコース。女子達は簡単コースを通りながら、見守ってたりしている。 「わー、なんかもう、筋肉痛に追い打ちかけてるー!!」 「筋肉痛やったん?」  後ろからついてきてる啓介に、早速ツッコまれる。 「なんか、これ、やってたら気付いた。なんかあちこち痛いんだもん……!」 「あー。完全になまってるんやろな」 「ていうか、お前、筋肉痛じゃないの?」 「今んとこ平気やけど」  むかー!  何でだよ、普段もほぼオレとおんなじような生活してんのにー! とツッコみたいけど、周りにみんなが居るので、いくら同居始めたって言ったにしても、さすがにそれはどうなのだろうと咄嗟に止めた。  でもこれに関しては、他にも筋肉痛を訴えてる皆がいて、大丈夫な啓介がおかしいってことになった。  そうだそうだー! なんか一人だけ涼しい顔してて。  なんなわけもう。 「ねー、簡単コース行って楽しくやるっていうのはどう?」  一つの山をクリアしたところで、一応皆に聞いてみると、「賛成」という奴もいたけど、「ちびっことやるの?」と笑いが起こる。 「だよなぁ……」 「諦めて頑張れや。頑張ったらきっと、昼飯うまいやろ」 「……まあそうだね。うん。頑張る!」  啓介の言葉に、確かに、と頷いていたら、「単純すぎ」「のせられすぎ」「ころころ転がされてる……」とか、皆が次々に言ってくる。 「なんだよもう!!」  苦笑しながらも言い返してから先に進む。  ――こういうのって、進めば進むほど、使う筋肉も疲労してくる訳で。    腕の力だけを頼りに、ロープで坂を上って、頂上までたどり着く。  見晴らしはいいし、風も気持ちいいし、最高なんだけど。 「なんかぷるぷるしてきた、腕」  そう言うと啓介は、うんうん、と頷いて、何も言わない。 「……つか、むしろ何か言ってよ」 「大変やなあと思うて――なんか言うと、怒るやんか」  くく、とおかしそうに笑って、啓介がそんな風に言う。 「まあ大丈夫やで、動けなくなっても、オレが家事とかしたるから」 「……もー全部任せる」 「ん、ええよ」 「いいの?」 「仕方ないやろ、動けなくなってたら」 「つか、なんで啓介は平気な顔してんだよーずるくない??」 「んなこと言われても」 「ずるいから罰として、家事な?」 「せやから罰とかやなくて、やってやるて言うてんやんか」  啓介がおかしそうに笑う。そんなオレ達のやりとりを近くで見てた皆が、ははっと笑い出した。   「おまえらって、家で二人ん時も、そんな感じ?」  なんかこの旅行中、この類のおんなじようなこと何回も聞かれたような気がするなあ……と思っていると、啓介が「そうかもなぁ」と笑う。 「いっつもしゃべっとるかも。な」  啓介がオレに視線を移して、ふ、と笑って見せる。ん、と頷いておいてから、思うのは。  ――確かに仲良いし、しゃべってるとは思うけど。  皆の前にいる時と、二人で居る時は、やっぱ、違うかも。  啓介が、めちゃくちゃ優しくなるし。  ……めちゃくちゃ近いし。触ってくるし。キスするし。  はっ。  ……また妙なこと考えてた。ぶんぶん首を振ってると。 「……つーか……バスケ三昧で筋肉痛なのに、誰、ここで遊ぶの選んだの」 「あそこで一人元気な奴だろ……」 ほんと、もっと考えてほしいよなあ、オレらはもっとブランクあるっつの……」  ちょっと遠くから、先輩達の、啓介へのツッコみが入ってる。  もちろん笑いながらではあるけれど。 「んなこと言うても、まあまあ楽しいでしょ?」    啓介はけろっとして、そんな風に言って先輩達を一蹴してるけど。  まあ確かに、とっても楽しい。微妙な筋肉痛さえ無ければ。 「次あれだろーいよいよ水ゾーン……!」  水深は十五センチって書いてあるけど。  広い池に、ぽんぽんと足場が出来ていて、多分、あれを渡るんだろうなぁ。 「わー、絶対、落ちそう……」  苦笑しながら言ったオレに、皆、わっと振り返る。 「お前、やめろよなー、嫌なイメージが出来るじゃんか」 「そうだよ! 絶対とか言うな」 「はは。だってー」  足場悪そうだしー。 「ほしたら、オレ一番、行くわ」  啓介がスタート地点に向かって颯爽と歩いていく。 「落ちたくない奴は、隣の落ちないゾーンで渡れやー。あ。財布とスマホだけ預かって」 「落ちる準備やめろよー!」 「落ちるつもりないけど、念のためや」  女子にスマホと財布を預けて、スタート地点に立ち、池の方を眺めてる姿は、カッコいい。啓介はあんまり落ちる気がしないのは何故だろ。  でもやっぱりドキドキするー。  

ともだちにシェアしよう!