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「筋肉痛……」
アスレチック開始!
簡単なコースと難しいコースに分かれてて、並列だったり少し離れたり。なんとなく皆で同じように進んでいく。当然オレ達男子はほとんど難しいコース。女子達は簡単コースを通りながら、見守ってたりしている。
「わー、なんかもう、筋肉痛に追い打ちかけてるー!!」
「筋肉痛やったん?」
後ろからついてきてる啓介に、早速ツッコまれる。
「なんか、これ、やってたら気付いた。なんかあちこち痛いんだもん……!」
「あー。完全になまってるんやろな」
「ていうか、お前、筋肉痛じゃないの?」
「今んとこ平気やけど」
むかー!
何でだよ、普段もほぼオレとおんなじような生活してんのにー! とツッコみたいけど、周りにみんなが居るので、いくら同居始めたって言ったにしても、さすがにそれはどうなのだろうと咄嗟に止めた。
でもこれに関しては、他にも筋肉痛を訴えてる皆がいて、大丈夫な啓介がおかしいってことになった。
そうだそうだー! なんか一人だけ涼しい顔してて。
なんなわけもう。
「ねー、簡単コース行って楽しくやるっていうのはどう?」
一つの山をクリアしたところで、一応皆に聞いてみると、「賛成」という奴もいたけど、「ちびっことやるの?」と笑いが起こる。
「だよなぁ……」
「諦めて頑張れや。頑張ったらきっと、昼飯うまいやろ」
「……まあそうだね。うん。頑張る!」
啓介の言葉に、確かに、と頷いていたら、「単純すぎ」「のせられすぎ」「ころころ転がされてる……」とか、皆が次々に言ってくる。
「なんだよもう!!」
苦笑しながらも言い返してから先に進む。
――こういうのって、進めば進むほど、使う筋肉も疲労してくる訳で。
腕の力だけを頼りに、ロープで坂を上って、頂上までたどり着く。
見晴らしはいいし、風も気持ちいいし、最高なんだけど。
「なんかぷるぷるしてきた、腕」
そう言うと啓介は、うんうん、と頷いて、何も言わない。
「……つか、むしろ何か言ってよ」
「大変やなあと思うて――なんか言うと、怒るやんか」
くく、とおかしそうに笑って、啓介がそんな風に言う。
「まあ大丈夫やで、動けなくなっても、オレが家事とかしたるから」
「……もー全部任せる」
「ん、ええよ」
「いいの?」
「仕方ないやろ、動けなくなってたら」
「つか、なんで啓介は平気な顔してんだよーずるくない??」
「んなこと言われても」
「ずるいから罰として、家事な?」
「せやから罰とかやなくて、やってやるて言うてんやんか」
啓介がおかしそうに笑う。そんなオレ達のやりとりを近くで見てた皆が、ははっと笑い出した。
「おまえらって、家で二人ん時も、そんな感じ?」
なんかこの旅行中、この類のおんなじようなこと何回も聞かれたような気がするなあ……と思っていると、啓介が「そうかもなぁ」と笑う。
「いっつもしゃべっとるかも。な」
啓介がオレに視線を移して、ふ、と笑って見せる。ん、と頷いておいてから、思うのは。
――確かに仲良いし、しゃべってるとは思うけど。
皆の前にいる時と、二人で居る時は、やっぱ、違うかも。
啓介が、めちゃくちゃ優しくなるし。
……めちゃくちゃ近いし。触ってくるし。キスするし。
はっ。
……また妙なこと考えてた。ぶんぶん首を振ってると。
「……つーか……バスケ三昧で筋肉痛なのに、誰、ここで遊ぶの選んだの」
「あそこで一人元気な奴だろ……」
ほんと、もっと考えてほしいよなあ、オレらはもっとブランクあるっつの……」
ちょっと遠くから、先輩達の、啓介へのツッコみが入ってる。
もちろん笑いながらではあるけれど。
「んなこと言うても、まあまあ楽しいでしょ?」
啓介はけろっとして、そんな風に言って先輩達を一蹴してるけど。
まあ確かに、とっても楽しい。微妙な筋肉痛さえ無ければ。
「次あれだろーいよいよ水ゾーン……!」
水深は十五センチって書いてあるけど。
広い池に、ぽんぽんと足場が出来ていて、多分、あれを渡るんだろうなぁ。
「わー、絶対、落ちそう……」
苦笑しながら言ったオレに、皆、わっと振り返る。
「お前、やめろよなー、嫌なイメージが出来るじゃんか」
「そうだよ! 絶対とか言うな」
「はは。だってー」
足場悪そうだしー。
「ほしたら、オレ一番、行くわ」
啓介がスタート地点に向かって颯爽と歩いていく。
「落ちたくない奴は、隣の落ちないゾーンで渡れやー。あ。財布とスマホだけ預かって」
「落ちる準備やめろよー!」
「落ちるつもりないけど、念のためや」
女子にスマホと財布を預けて、スタート地点に立ち、池の方を眺めてる姿は、カッコいい。啓介はあんまり落ちる気がしないのは何故だろ。
でもやっぱりドキドキするー。
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