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「答え合わせ」

「……さみ……起きれる?」  すぐ近くから聞こえてくる声に、ん、と覚醒。  一瞬どこだっけ、首痛た、と思ってすぐ思い出した。  声のした方を見ると、オレはまんまと啓介に寄りかかってたみたいで。 「あれ。オレ、寄りかかっちゃってた……?」  首が痛いのでゆっくり起き上がりながら聞くと、啓介はクスッと笑った。 「んーまあ、でもオレも、オレに寄っかかってる雅己の頭によっかかってた。こうなってる感じ?」  両手で三角を作りながら、啓介が「支え合ってる感じやった」と笑う。 「むしろオレが乗ってた感じやから、首、痛たない? 平気?」 「ん、なんか変に曲がってたからちょっと……」  首を擦りながら、動かしながら苦笑。 「最後の休憩やてさっきアナウンスかかった。トイレ行くやろ」 「あっそうなの? うん、行く。ていうか、何か食べよう」 「一気に元気んなったな」  啓介がクスクス笑ってそう言う。少し抑え気味な声なので、オレも自然と合わせて静かに話してたけど。  どうやら後ろの皆も寝てたみたいで、なんか静かだけど、もぞもぞ動いてる気配がする。 「次のパーキングおっきいところだよね。お土産も見よ~そういえば自分の買ってないかも」 「オレもそうやな……あんま旅館無かったもんな」 「見ようねー」 「ん」  そう言ってると、バスが旋回して、パーキングに入っていき、駐車した。 「少し早めについてるので、ここでの時間、三十分位取りますか?」  運転手さんがそう言って振り返り啓介にそう聞いた。すぐに「じゃあそれでお願いします」と啓介が答えながら、隣でめっちゃ笑顔になってるオレを見て笑ってる。 「じゃあ三十分後には席に座ってるくらいでお願いします」 「了解です」  答えた啓介はすぐに立ち上がって、後ろを振り返った。 「ほしたら、皆、三十分後、集合。座ってへんかったら置いてくんで~」  皆が、えーー! とノリ良く楽しそうに返してる。 「バスで待ってる奴居る? 皆一回出るってことでええ?」  そう聞いた啓介に、皆頷いたみたいで、「ほしたら好きに出てってええよ」と言って、啓介はまたオレの隣に座った。 「全員出たらオレ、出るんで、運転手さん、トイレとか買い物あるなら先にどうぞ。入れ替わりで行きます」  そう言った啓介に、運転士さんは振り返って、笑顔で。 「皆さん出たら、鍵をかけて、行くから大丈夫ですよ。十分前にはバスあけときますね」 「あ、ほんま? じゃあええか……そしたら――――」  言いながら再度後ろを振り返り、啓介が言うことに。 「バス、皆が出てから、いったん鍵かけるから財布とか忘れんといてー? 十分前には開けてくれるて」 「はーい」  そう言ってまた座った啓介を振り返って、運転手さんが微笑む。 「ありがとうございます」 「いえいえ」  なんだかほのぼのな空気が二人の間で流れている。  ……啓介の、こういう感じ。  …………オレは、なんか。とっても好き。 「雅己、とりあえず皆が出てからオレ出るから、先行って、なんか食べとってもええよ」 「え。いい。一緒いく」  運転手さんが下りて、出入り口の階段の下で、皆を見送り出した。皆が並んで出て行く中、オレはぽん、と背もたれに背をついて、立ち上がる気なし、をアピール。 「別にオレ、そんな食いしんぼじゃないしー待てるし」 「……んや、それはどうかと思うけどなぁ。食いしんぼやろ」 「そんなことは……あるかもだけど」  あははー、と笑いながら。 「でも、昔からこういう時いっつも、オレ、お前と居たでしょ」 「――――……まあ。せやな」  ふ、と啓介は笑う。 「別に先に行っててくれてええのに、大体お前、居たよな」 「啓介、大体こういう時、最後まで見守るじゃん。なんかいつもさ、体育館しめるとか、体育倉庫鍵かけるとかさぁ……電車とか乗る時も、いっつも最後」 「……そうやっけ?」 「そうだよ。いっつも。遅れてる奴居ないかなーみたいな」 「あーまあ……なんとなく、やなあ、それ」  思い出しながら、せやったかもしれんけど、と啓介は苦笑してる。 「オレはそれをなんとなくしてる、啓介がさ」 「ん」 「……あ。えーと」 「ん?」 「――――……そういう感じ、見てるの好きで。あ、なんか、またお兄ちゃんゾーンから見てる、みたいな」  流れで「好き」と言うしかなくて、ちょっと照れて、最後の方は笑いながらそう言ったオレに、啓介は、ふーん、と笑う。 「まあオレも、なんとなく側にいるのが嬉しかったから。なんでもええけど」 「――――そうなの?」 「そうやで?」  ふ、と笑う啓介。 「そっか」  言いながら、ついつい、とっても笑顔になってしまう。  昔の答え合わせ、するみたいなの。ほんとずっと一緒に居たなあ、ってまた思い出したりして。……なんかちょっと……ていうか、すごく。楽しい。  皆が降りてから、オレ達もバスを降りて、運転手さんと別れた。 「何食べよー、美味しい匂いがするー」 「まだ遠くて匂わんし」 「でも匂いする気がするー」 「くいしんぼじゃないて、誰のことやねん」  クスクス笑う啓介に、にっこり笑って、「オレ」と言うと、ふ、とまた笑われる。  ……うん。楽しい。 (2025/2/21)

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