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「秘密の共有」
◇ ◇ ◇ ◇
ようやく出発地点に帰り着いた。
バスから荷物などを降ろしている時間、オレは早めに荷物を受け取って、ちょっと離れた空きスペースで、皆が終わるのを待つ。啓介は、相変わらず。降ろした皆の荷物を振り分けていくのを手伝ってるので、オレが啓介の荷物も持って、荷物番。そこに、同じように荷物を早く受け取った要が、やってきた。
「雅己、お疲れ」
「うん、疲れたね~でも、楽しかったよなぁ」
「なんかさ、この終わる時が、寂しいよな、旅行って」
「なー、ほんとそう」
「啓介は最後まで忙しそうだけど」
そんな風に言って、要は笑う。「ほんとだよなー」と笑い返して、オレも啓介に視線を向ける。
「あ、そうだ。雅己――さっき皆で言ってたんだけどさ」
「うん。何?」
「合コン、しようよって」
「あ、そうなんだ」
「結構、彼女居ない奴も多かったからさ。まあ合コンっていうか……彼女持ちの奴の、彼女の友達とかと適当に集まって、遊ぼうよって言ってる」
「へー、楽しそうだね」
ふふ、と笑って返すと、要は、ふ、とオレを見た。
「雅己は? 来る?」
「んー? オレー? そー、だなぁ……」
――前なら絶対行ったけど。
サークルの皆と、女の子たちと楽しく遊ぶとか。絶対楽しいだろうし。
良い出会いがあったら、その後も、サークルの皆とも混ざりながら、彼女も遊べたりって……絶対楽しいよね。と、思ったと思うんだけど――。
「合コンとかは、しばらくパスしとこうかな」
「――そっか」
「ごめんね、誘ってくれたのに」
しばらく、というか。
オレが啓介と仲良く居られる限りは、行かないと思うけど。
そんなことを思っていると、要は、ふうん、と言いながら笑った。
「なんとなく、雅己は来ないのかなーと、思いながら聞いた」
「あ、そう?」
あれ、そうなんだ。……って、あれ?
オレ、合コン……というか、女の子とかと遊ぼうってやつも、前は行ってたけど。
……要、どういう意味で、言ってるんだろ。
ちょっと不思議に思って、要を見ると。
要は、なんだかすごく、楽しそうに、にっこり笑った。
「こういう旅行とかさ――やろうよって皆言うけどさ、実際動いて決めて、声かけてくれるのって、啓介と雅己じゃん?」
「……そう?」
「うん。高校ん時の祭りとかさ、休みで遊びに行こう、とかもだしさ」
「……んー、そうだね。まあオレは、思いつくこと言って、それを啓介が実現してくれてるような気もするけど」
啓介任せになってるかも。なんて、言いながら笑ってしまうと。
「大学違ってても、この先働いてもさ、ずっとオレら、仲良くしていられたら、いいよな」
「うん。そだね」
「――雅己と啓介がそういうの、結構先頭切って集めてくれるからさ。お前達が仲いいと、その分、オレ達もずっと仲良くいられるような気がするんだよね。まあ仲良くしてよ、ずっと」
「……ん。分かった」
ふ、と笑ってしまう。
なんだか突然。本当に、今、突然。言いたくなって、オレは、要を見つめた。
「要は、さ」
「ん?」
「――オレの、親友、だよな?」
「……何それ、急に。ちょっと恥ず」
クスクス笑う要は、それでも、すぐに、「そうだよ」と返してくれる。
「――オレね、要」
「ん」
「……啓介が、好きなんだ」
要が、ぱっと、オレを見た。
オレも、要と 視線を合わせる。
「……だから。合コンは、行かないけど」
「――ふうん……そっか」
要は、ふ、とオレから視線を逸らして、啓介の方を向くと。
「雅己がそれなら、もう、向こうもそうだよね?」
なんだか面白いことを話してるような、ニコニコ顔でそう言って、オレに視線を戻してきた。
オレは、数秒、要と見つめ合って、それから、ん、と頷いた。
「――まあ。分かってた、ような?」
クスクス笑って、要が言うので、「びっくりしてない?」と聞くと。
「びっくりは、全然してないな」
ははっと要は笑って、「それで、一緒に暮らし始めたの?」と聞いてくる。
ん、と頷くと。
「良かったな」
笑顔で言われる短い言葉に。
――いろんな、想いが入ってるみたいで。
ちょっと、泣きそうになりながら、頷いた。
(2025/5/16)
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