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38話その後 ギクシャク

「あれ、幹人もう寝るの?早いね」 「…………おやすみ」 「おやすみー」 あの日からというもの幹人の態度がすごくギクシャクしている おれと目を合わせないようにするしあまり喋らないしくっつくとすごく驚かれてキョリをおかれる まあ、あんなことがあったのに前と変わらないおれがおかしいのかもしれない 「………………」 幹人が眠りに行ってから一時間ぐらい経ったのを確認してこっそり幹人の部屋へと入る 「……っ、……!ううっ」 ベッドの上でうなされている幹人の頭を撫でる 「とうさ、かあさん……」 幹人はよく眠っているときにうなされている 幹人自身は気づいてないけど 多分昔のこと、なんだろうな原因は ……幹人がおれにあんなことしてたのは他人に甘え方も頼り方も分からないからあんな形になったんだろうな 怖い、寂しい、助けて、嫌だ、ひとりにしないで…… ……一人で色んなこと抱え込んじゃってたんだろうな 「……!……はー、びっくりした……かなたか」 「あ、ごめん、起こした?」 「……何?」 「え、あー……一人で寝るの寂しくて来ちゃった 一緒に寝てもいい?」 「……別に」 「えへへ、ありがとう」 幹人のベッドに入り幹人にくっつく 「……狭いでしょ 自分の部屋のベッドで寝なよ」 「もう布団から出たくないからやだ」 「…………」 しばらくして幹人からすぅすぅと寝息が聞こえてくる ……今日はもう大丈夫そうかな 幹人にくっついたままおれも眠りに落ちた        ーーーーー 「……かなたってヤられるの嫌だったりしないの?普通嫌でしょ」 次の日の朝、幹人がおれを見ずにポツリとつぶやく 「嫌って何が?」 「……俺、かなたのこと無理やり犯してたし、 ……あんなこともしたのに 別に怒ってないとか言ってたけど俺に気、使ってるだけじゃないのかなって」 「気を使ってるだけなら悪口とか言わないでしょ、なんかこう……いい感じの言葉だけ使うんじゃないの? 初めは嫌だったけど今は別に…… 痛くなかったらいいよ…………嫌じゃないし」 「…………」 「あーーもーー!」 幹人の顔を両手で掴んで無理やりおれの方に向かせる 「いっ!?」 「おれ気にしてないって言ってるじゃん! いつまでもウジウジしないでよ! ウジウジしてる幹人嫌い!」 「きらっ」 「早く前みたいな幹人に戻ってよ おれが好きなのは前の幹人だし」 幹人が黙り込むから 「わかった、じゃあ小説の書き方の本が欲しい、あと紙とペン おれが小説家になりたいこと知ってるでしょ それくれらたらこの話終わり! もうしない!それでいいでしょ」 「いや、でも……」 「あーー!もう終わり!聞こえない!」 大声を出しながら自分の耳をふさぐ 困ったような顔をして……はぁ、とため息をついておれの両手を掴んで 「かなた、…………ごめん、ありがと」 「別におれ、お礼言われることしてないし」 ぷーいっとそっぽを向きながら言うと幹人の口元が少し緩む 「あー!幹人今笑ったでしょ! 久しぶりに笑ったの見た!」 「笑ってないよ……」 「笑ってるじゃん!顔隠してー、……」 幹人の目からキラリとしたものがこぼれ落ち、おれはただ静かに幹人に寄り添った

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