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木村勝編5-2 ※輪姦

 柳はしばしその場にうずくまっていたが、痛みが治まってくると、酷い目に遭った息子を労うように撫でさすって下着の中に収めた。 「テ、メ、ェ、はぁっ! ブッ殺されてぇのかなぁっ!? ンの奴隷風情がァッ!」 「うごぉおおおっ……! っは、ゲフッ……!」  怒りに満ち溢れた声で叫ぶ柳の力任せの膝蹴りが勝の鳩尾に直撃した。痛みに気をとられた勝の抵抗が弱くなる。 「おい。謝れよ」 「ぐっ……い、嫌、だっ……」 (なんで俺が謝らなくちゃならないんだ……! 人にこんな真似して、悪いのはどっちだと……!) 「は、何コイツ、あったま来た。これがあの木村勝? うっわ、夢壊れたわー。オレさぁ、自分が悪いことしといて謝らねぇ図々しい奴ってマジで嫌いなんだよ」  柳はそういう自分も勝のことを言えたものではないのか、などとは微塵も思っていない。むしろ自分の意思が尊重されることが当たり前だと信じている男だ。生粋のいじめっ子である。 「お手元のパンフレットにもあります通り、この木村勝は、教師の立場を利用して生徒いじめをしている最低の男なのです。もしも皆様の大切なお子様がこんなクズ教師に教わるようなことがあったらと思うと……ああっ、なんておぞましい」  鷲尾が演技がかった口調で言うと、会員達も勝に敵意を剥き出しにした野次を飛ばし始める。 「……ですから、今後二度と過ちを犯さないよう、本日はこれに躾をして参ります。教師も所詮は人間。間違っていることは正してやらねばなりません」 「が、学園長っ!? 何言わせてんだよ!? こんな大勢の前でばらすなんて……約束が違っ……!」 「その点に関しては心配しなくていい。皆、ここであったことを口外することはない」  神嶽に言われて勝は息を詰まらせる。まだ脅迫は生きている。すなわち、これからも理不尽な凌辱が続くということである。 「そう、これはあくまで教育なんだよ。それでこいつのケツマンブッ壊れて一生ウンコ垂れ流しになろうが? 人工肛門になろうが? オレらにはなーんも関係ねぇけどな!」 「先生、素直に謝っておいた方が身の為だぞ。俺達、どうやって壊そうか考えるのは得意なんだ」  柳に便乗して、蓮見も馬鹿にするように口元を緩ませながら言う。クラブではそんな風に好き放題に暴れられることを、当然のように見てきて、慣れているのだ。  それには、さすがの勝も折れた。そのようにふざけた理屈で一つしかない身体を壊されてはたまらない。 「っ……うぅっ……す、すいません……した……」 「聞こえねぇんだよ。テメェそれでも体育教師か? ああ? 腹から声出せや!」  柳がまた、勝を蹴り飛ばした。しかし今度は腹でなく、股間を狙って。 「あぎゃぁあああああっ! ぐ、はぁっ……! す、すいませんでしたぁっ……!」 「なぁんかまだ誠意が足んねぇよなぁ?」  柳が味わった以上の痛みにぶるぶると身体を震わせながら床に伏している勝のことなど全く気にならない様子で、柳はわざとらしく声を上げる。 「んー、じゃあ、こうだ。『俺、男にケツマン掘られるのが大好きなマゾなんです。あなた様のご立派なものでたくさん虐めてください』って言えたら、まあ許してやってもいいかも?」 「そっ……そんなの、言う訳……っ」 「あっそ。じゃあいいや。皆さーん!」  柳が冷たく言って会員達に顔を向けると、この場に似合わない子供っぽい笑顔を浮かべる。  蓮見がステンレスのワゴンを押して責め苦の道具を持ってきていて、その中には大きな黒いリボルバー銃のようなものも混じっていた。蓮見がそれを手に取ると、勝の顔色が悪くなった。  トリガーを引くと、先端のドリルが凄まじい勢いで回転し、ギュインギュインと鋭い金属音を発する。 「見ての通りの電動ドリルなんすけどぉ、こいつのマンコ、ズタズタにしてやっても良いと思う人ー?」 「ひいぃぃぃぃぃっ……!?」  柳の悪魔のような提案に、会員達が盛り上がる。  このクラブでは人の身体がどうなろうがどうだっていい輩しかいないのだ。「最低の教師に罰を」「肛門に別の穴が開くところが見たい」そんな無責任な言葉さえ飛び交う。  勝はあまりの恐怖に助けを乞おうと神嶽を見上げるが、相変わらずの何の感情も映さない顔を前にして、声が出なかった。  喜びも、怒りも、ましてや哀れみもない、神嶽はまるで精巧に作られた人形のようである。  例えどれだけ懇願しても、神嶽はきっと助けてなどくれない。  彼の吸い込まれるような仄暗い瞳を見ていると、勝は本能的な身の危険を感じずにはいられず、弱々しく柳に視線を戻した。 「ぁ……あぁっ……お、俺、ぇっ……」  柳らのパフォーマンスにすっかり怯え切った勝は、慌てて復唱し始める。 「俺……お、男にっ、け、ケツマン掘られるのが大好きなっ……ま、ま、マゾなんですぅっ……ひっ、ヒイィ……あ、あなた様の、ご立派な……ものでっ……たくさん、虐めて、くださいぃいっ……」 (違う……違う、違うっ……俺はそんなんじゃないっ……こんなこと思ってないっ……)  柳はそれを真顔で聞いていたが、勝がなんとか言い切ると、我慢していたものを爆発させるようにその場で腹を抱え、大声で笑い出した。 「アッヒャヒャヒャヒャヒャッ! 言った! ホントに言った! ハァーおかしっ。あ、オレさ、他人にされた嫌なことって結構根に持つから。許さねぇよ。まーさすがに今はコレ使わねぇけど、お仕置きな」  何の悪びれもなく、満面の笑みで自身の発言を撤回する柳に、勝は目を剥いた。 (な、なんっ……何なんだよ、こいつら……!? 頭、おかしいだろっ……!)  常識の通用しない人間が神嶽以外にも存在することを身を持って実感し、勝はそれだけでじんわりと涙がこみ上げてきた。

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