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木村勝編9-1 ※野外、犬扱い、スパンキング

 神嶽は再び、勝を夜のグラウンドに連れ出していた。  今の勝は全裸に剥かれ、首には犬用の赤い首輪が装着されている。  更に、尻には犬の尻尾を模したアナルプラグまで挿入してあった。毛羽立ったフェイクファーがだらりと垂れ下がり、四つ這いを強要されると、その姿は正に大型犬のようであった。  体育倉庫の一件で結果的に犬と認める発言をしてしまった勝だが、快楽地獄から逃れたい一心であり、無論本気ではなかった。  しかし神嶽の前ではそんな言い訳など通用するはずもなく、またドリルが良いのかと脅されては、勝になす術はなかった。  首輪に繋がれたリードを神嶽が軽く引いてみせると、屈辱に地を見つめたまま歯を食いしばっていた勝が不機嫌な顔を上げた。 「う……うぅっ……あんたっ……本気で俺に犬の真似させる気かよっ……? 頭がおかしいんだよ、クソがっ……」  か細い声ながらも勝は悪態をつく。だが、それも今となってはただの強がりでしかない。 「それに……こんなっ……そ、外で、なんて……。誰かに見つかったら、どうするつもりなんだよっ……」  少しでも身体を隠すように神嶽の足元に寄り添って、小刻みに震えている。  勝にもまだこうして全裸を外気に晒すことを異常だと思える羞恥心はあるのだ。 「犬が散歩するのに人目を気にするのか」 「て、てめぇっ……! あッ、グエェッ……!」  ついついカッとなって声を荒げようとする勝に、神嶽はリードを強く引っ張り上げた。 「うっ、ぐうぅっ、わ、わかったよ……! ハァッ……このまま……歩きゃいいんだろ……」  勝は半泣きになりながら、這い這いしたての赤ん坊のようにぎこちなく、小さな歩幅で歩き出した。  四つ這いで歩くのはここまで難しいことだっただろうか。非日常的な状況に、勝の身体は上手く動かないでいる。 「早くしろ。そのペースではいつまで経っても終わらないぞ」 「そ……そんなこと、言ったって……うぅっ、うぅぅぅ……」 (こ、こんなの……いくらなんでも、恥ずかしすぎるっ……! 動くと、プラグも意識しちまうしっ……俺……本当にもう人間として扱ってももらえないなんてっ……あんまりだ……)  長い尻尾は勝が動くたびに太ももの裏にもあたり、そのフサフサとしたものでくすぐられる感触が、どうしようもない恥辱を生んだ。  何歩か進んでは止まる。そのたびに神嶽に急かされ、また進む。そんなことの繰り返しだったが、やがて耐えかねた勝はその場から一歩も動けなくなってしまった。  ずるずると無理やりに引っ張られ、地面に肌が擦れる痛みに呻きながらも、もう歩きたくないといやいやをするだけで、勝は動こうとしない。  神嶽はそんな年甲斐もない勝を一瞥すると、腰を屈め、プラグの台座を掴んでぐいぐいと奥をほじり始めた。 「んぐぅううううっ!? や、やめ……動かす、なぁっ……! はっ、あぁ……それ……駄目、だって……!」 「勝。まだ散歩は終わっていない」 「もう動けねぇよおぉっ……! 頼むから……こ、こんぐらいで、勘弁してくれぇ……」  泣き言を垂れる勝の尻を、神嶽はソフトな痛みを感じる程度に叩いた。 「何すんだっ、や、やめてくっ……! あぁっ!? ちょっ、待てって、少しは俺の話を……」 「相変わらず物覚えが悪いようだな、お前は。一度言っただけではわからないか」  悪いことをした子供への罰のように、一定のリズムで尻を打つ。  しかし勝は直腸内の異物にまで伝わるその振動がかえって刺激となり、出し入れされるプラグをギュウッと締め付けてしまう。頭を振り、下半身を跳ねさせながら身悶えた。 「だ、だって……嫌なもんは嫌なんだよぉっ……! あぉっ、おおっ……プラグ動かしながらっ、叩く、な……尻がっ……お、おかしく……んおぉおっ……!」 「感じていないでさっさと手足を動かすんだ。いいな」 「はっ、はっ、ひ……!」 「返事は」 「うぐぅっ……! わ……わかり……ました……あ、歩き、ますぅ……」  脅すようにプラグを再び深く埋め込まれ、勝は渋々歩き出す。  相変わらず動きは鈍いが、それ以上にこのような屈辱的状況で感じてしまう自分を恥ずかしく思うだけの理性は残っており、先ほどよりは積極的であった。  広いグラウンドをぐるりと一周りし、二人はようやく元の場所に戻ってきた。  自分は普段生徒に授業で走らせているというのに、犬として歩く勝は一周だけで三十分もの時間を要していた。  散歩させられている間中、どうしようもない羞恥と、恐怖と、快感に支配されていた勝。  むわりとした夏の夜の暑さのせいだけではない脂汗を滲ませ、表情にも疲労が見て取れる。それだけでもう十分に、体力と気力を消耗していた。 (はぁ……あぁ……やっと、終わった……)  足を止めた神嶽も「よし」とだけ呟いたことから、勝は今日の責め苦が終わったものとすっかり安堵していた。  しかし地獄の時間はこれからであった。

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