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木村勝編10-1 ※フィスト

 クラブに連れ込まれた勝は、落ち着かなげに浅い呼吸を繰り返していた。  男には馴染みのない産婦人科の内診台のような拘束器具に、両脚をM字に開脚したアナルも何もかも丸見えの状態で縛り付けられている。今宵もやはり、大勢の前での公開調教となるのだ。  目の前には、相変わらず他人の不幸を蜜の味とする悪趣味な会員共。そして、勝をこのような腐敗した道に堕とした神嶽に、それを補佐する鬼畜スタッフ達。  事前準備として排泄をも余儀なくされた勝は自身の被虐的な姿を想像し、あまりの恥ずかしさに小さく呻きながら身震いしていた。  勝の腸内洗浄が済むと、神嶽は医療用の薄いロンググローブを装着し、ローションをたっぷり注入してからヒクヒクと震える皺を揉み込み始めた。  焦らずゆっくりと、彼の方から入れて欲しいと綻んでくるまで、ひたすらに優しく。  ふっくらとした中心に指をつぷりと押し込めてやれば、そのまま吸い込まれるように沈んでいった。  一本入ってしまえば、二本は容易い。そして三本と続く。勝のアナルはもう成人男性の指三本程度なら楽々と咥え込めるほどの訓練を強いられてきた。  四本となるとまだ辛そうだが、しばらくマッサージしているとそれも無理なく受け入れることができるようになっていた。  だが、問題はここからだ。 (な……なんか……今日はずいぶん念入りにやるんだな……)  勝がついそんな疑問を浮かべてしまうほど、神嶽は下準備に時間をかけていた。  それもそのはずだ。今回、会員達には勝の拡張の成果を披露することになっている。 「勝。いま、俺の指は何本目だ」 「えっ……? えっと……よ、四本……?」 「正解だ」 (四本って……すっげ……なんでそんなに入ってんだろ……俺の尻……訳わかんねぇ……)  改めて言葉にしてしまうと、その異常さに勝は激しい羞恥を覚えた。 「ぅくっ……はぁっ、はぁ、んんんっ……」  四本もの指で中を掻き出すように動かされると、勝は悩ましい声を我慢することができなかった。 「お前はクソ穴を拡げられたあげくこんな風に指でほじられてよがるのか。これほど浅ましい身体を持て余しながらよくも今まで神聖な学園の土を踏めていたものだな」  神嶽は会員達に見せつけるように冷たく罵ってみせる。勝もただただ顔を赤くして俯くのみだ。 「ん……だ、だって、あぁ、そんなの、ぉ……ふぁ、あ、くふぅっ……」 (もう、しょうがないだろぉっ……。学園長が俺をこんな身体にしたんだ……)  再びクラブに足を踏み入れ、こうして身動きができぬよう拘束されては、勝はだいぶ大人しくなっていた。  これまでの調教で神嶽の実行力は痛感しており、加えて彼が今の勝にとって絶対的立場であることも目の当たりにした。  もう、暴れて逃げ出そうとするのは無駄であると、内心諦めかけている。  吐かれる台詞とは真逆に、神嶽の異様なまでの優しい愛撫もあいまって、緩々と悪魔的な官能が勝の肉体を高ぶらせていく。  神嶽は半ば夢心地の勝のギチギチに拡げられた肉穴を、さらに責めるべく行動を開始した。 (ぁ……この動き……ま、また入れようとしてんのかな……もう一本……五本目……え……五本……?) 「ほおーっ、もう少しで支配人のあの大きな手が全て入ってしまいそうじゃよ!」 「おお、あんなに狭かった穴があそこまで開くだなんて何度見てもすごい。人間の身体というものは不思議なもんだなぁ」 「もうそこらの粗チンではスカスカに感じてしまうほどのガバマンだなこりゃ! わはは!」  とろけそうになっていた勝の目が正気に戻ってぎょっと見開かれる。  自らがいったい何をされているのかわからない状態の勝は、見たままを言い放った会員達の歓声にたちまち震え上がった。 「えっ……ま……まさか……ほ、本当にっ……!?」 「そうだ。お前にはこれからアナルフィストを行う」 「あッ……あ、ぐ……フィスト……」  それは柳にも示唆されていたことであったが、まさかこんなにも早くその機会が来ようとは、勝は欠片も思っていなかった。  惨めな凌辱の先に待つ未来など、想像するのも恐ろしかった。  勝が軽く握り締められていた自身の拳を視界に捉える。大きく、ゴツゴツと骨張った男らしい手。  それと同様の規格をした神嶽の手がいま、あろうことか肛門から体内へ侵入しようとしている。 「む、無理だ……むぅっ、無理無理無理っひっひぃいいいいいッ!!」  これから起こる災難に勝はたまらず悲鳴を上げた。嗜虐心をそそられた客席は「突っ込め」コールで盛り上がるが、微笑みを湛えた鷲尾がその場を宥めた。  無論、無理やり突っ込んで裂傷させるだけの肉体破壊ショーならば簡単だがそうはいかない。勝はまだまだ利用できる価値がある。

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