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木村勝編10-2 ※フィスト
神嶽はいよいよ五本の指を揃え、苦しそうに拡がりを見せているアナルを徐々にこじ開けていく。
手幅は8センチ以上、より入りやすいよう窄めても7センチにはなる。かなり拡張の進んだ勝でも未知の領域だ。
「ヒッ……ヒイィーッ! 無理です……あ、あぁ、それだけは、マジでっ、無理ぃッ……!」
「無理ではない。ゆっくり口から深呼吸をして、力を抜け。自分からアナルを開かせるようにするんだ」
情けなくヒィヒィと喉を引き絞り、首を横に振って慈悲を乞うことしかできない勝。
神嶽の言うことも、錯乱寸前の勝の頭では理解が追い付かない。
「おやおやぁ? このままですとフィストどころか人工肛門になってしまう過程が見られるかもしれませんねぇ」
舞台の様子を映している巨大モニターが局部にズームされていき、鷲尾がわざと客席を煽る。
「じ、人工っ……」
その言葉を聞くや否や、勝の顔色がゾッと青ざめた。身動きのできない状況で、既に肛門は神嶽の指に弄ばれている。
機械で責められるのもおぞましい出来事ではあったが、生身の人間の感触は力加減がはっきりと伝わり、どうするつもりなのかがわかってしまう。
そうこうしている間にも、神嶽はほぐす手を止めない。勝も覚悟を決めなくてはならない時が、刻一刻と迫っていた。
「さあどうする。素直に受け入れる努力をするか、一生排泄に困る身体になるか。壊すのは一瞬でできるがな」
「そ、そんな……そんな、の……ぁ、うぁ……」
歯の根を鳴らしながら神嶽の双眸を見つめても、勝が察するものといえば、拒めば本当に壊されてしまうだろうただならぬ気配。
絶体絶命の窮地に置かれてしまっては、答えなど決まっていた。
「い、嫌だっ……フィスト……されます……」
「してください、だろう」
「うぅぅぅ……し、してください……俺の尻に、学園長の拳……ぶち込んでくださいぃぃ……」
望まぬ恐ろしい行為を自ら求めなくてはならない現実に、勝はわあっと泣き出した。少しでも苦痛を和らげようと呼吸は嗚咽混じりだ。
神嶽は勝の様子を注意深く観察して進退を続け、時にじっくりと手首を捻ったりしながら、勝の肛門を限界以上に押し拡げていく。
「いくぞ」
「ふんぐっぎぎぃ──ッ!?」
柔らかくなっているはずの勝のアナルでも、メリメリと音がしそうなくらいに大きく、グロテスクに拡がっていく。
そうして、神嶽の手の一番太いところが括約筋を通り越し──ローションに浸された腸内に、遂にずぼりと手首まで入っていった。
(きっ、きつすぎるぅッ!? 学園長の手がぁあああああッ!?)
紛れもなく拳が勝の直腸内へと消え、客席からおおお……と感嘆の声が上がる。
物好きな会員達の反応と下腹の確かな膨張感で、信じがたい現実に直面した勝の喉奥から絶叫が迸った。
「あぁッ、ああああああああっ! 嘘だっ! ほ、ほんとに入って……!? も、もう、嫌だ……なんでこんな……ひ、拡がっちまう……早くっ、抜いてくれよぉ……!」
「今すぐ抜いてもまた苦しいだけだ。それにな……勝。よく考えるんだ。俺はこのまま直腸を突き破りお前を殺すこともできる」
そう言って神嶽は勝の直腸に埋めた手を進めた。
動かしたのはほんの数ミリだったのだが、本当に破られるかもしれないという恐怖に駆られた勝はすぐに喚くのをやめた。
(ど、どうし、よう……こわい、怖い、怖い、怖い怖い怖いっ……!)
本来、性交をするようにはできていない器官に、ペニスより更に巨大なものが入っているのだ。
勝はその凄まじい圧迫感に顔を強張らせ、奥歯を噛み締めて小刻みに震えることしかできないでいる。
「ひぎゃぁああああああっ! う、動かすなっ、待ってくれっ!」
「抜けと言ったり動かすなと言ったり、本当にお前はわがままな奴だな」
「それは……もっ、頼むから、やめてくれぇっ……こ、こんなの、怖くて仕方ないんだよぉっ……」
「怖くない、大丈夫だ」
冷徹な声色はそのままに、神嶽はガチガチに緊張した勝の太ももを小さな子供にするような手つきで撫でてやる。
「痛みはあるか」
「……んなの、わ、かんねっ……」
「直腸自体の感覚は乏しい。穴と腹はきついだろうが、じきにこれも慣れてくる」
淡白に言いながら、神嶽は次に勝の太ももを撫でていた片手を、勝の指先に差し出した。
「今、お前の全ては俺の思うままだ。お前を天国に連れて行ってやることも、排泄機能を破壊することも、何だってできる。より楽な方法で終わらせたいのなら、俺に身を委ねることだ」
(は、破壊って……こ、このまま俺ん中をどうにかするってことだよなぁっ!? む、無理っ! 嫌だ、それだけは!)
あまりにむごい台詞に、勝は気を失いかけた。
どうにか精神を落ち着かせるように深く息を吐き、意を決して神嶽の手を握る。勝なりの身を任せるという合図だった。
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