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木村勝編10-3 ※フィスト

「よし」とだけ呟き、神嶽は勝の手を握り返してやった。 「ではまず、フィストが気持ち良いと言え」 「なっ……」 (こ、こんなに苦しくて怖いのが、良い訳ねぇだろっ……!?) 「早く済ませたければ、言え。本当にそうなってくる」  恐怖に縛られていては快感など得られない。実にポピュラーで簡単な自己暗示だ。だがそれも、勝にとっては効果がある。 「……き、もち……いい」 「そのまま続けろ」 「っ……いいっ、気持ち良いっ、フィスト気持ち良いっ……!」  勝は自棄になって吐き捨てる。何の感情も込められていない言葉。  しかし、それを口にし続けることで勝には決定的な変化が現れた。 (ぁ……こ、これ……プラグよりも柔らかくて……あったかくて……これが、学園長の手……)  今までにも見られたが、やはり勝には快感を目覚めさせるスイッチのようなものがある。  肛門を拡げられ、体内に侵入されることで、彼の頑なな心も素直に開かれていくのだ。 (今、俺を握っててくれてるこれが、腹の中に……?)  勝の視線が強く握っていた神嶽の手に向いた。力を少し緩め、汗ばんだ指でその形を確かめるように撫でさえする。  不安と恐怖の先に未知の悦楽への期待が隠れているのを、神嶽は見逃さなかった。  勝の緊張が和らいできているのを確認すると、神嶽は伸ばしたままだった手を腸内で握り締めた。 「ひぎぃいいいっ!?」  唐突な動きに、勝が潰されたような呻き声を上げる。それだけで神嶽は何もしないが、勝の方は苦しげに脂汗を浮かべている。  日々の拡張で直腸内も調教に応じた柔軟性を見せているとはいえ、初めてのフィストはさすがの勝もショックを受けたようだ。  神嶽はしばし勝の呼吸に合わせて押し引きを繰り返しながら馴染むのを待ち、また手首に捻りを加え始めた。 「ふぁ……はあぁっ……だ、駄目だ……そんなの……そんなことしちゃ、駄目、だぁっ……」  ゆっくりと掘っていくたびに、引きつっていた勝の顔が糸が切れたように緩んでいく。  温かな中は悦んで規格外の異物を迎え入れ、柔らかな肉襞を包み込んで絡ませる動きを見せる。 「気持ちが良くなってきたようだな」 「ああぁっ、そ、そんな……お、俺……こ、拳なんか入れられて……気持ち良く……」  ありえない肉体の反応を自覚し、勝の視線はあちらこちらへと散った。  敏感な性感帯と化している勝の直腸粘膜は、太い指骨の凹凸で擦りあげられるだけでどうしようもない官能を生んで勝の理性を崩していく。 (こ、拳、擦れる……俺……このまま激しくされたらどうなっちまうんだろう……)  神嶽が要望通り、抉るペースを強くした。 「うごッ!? んごぉおぉおおおおっ! い、いぎなり゛ッ、激し……や、やめへ……激じずぎるがらあぁあああ゛っ……!?」  突如として始まった強烈なフィスト掘削に勝が大げさに肢体を震わせて仰け反った。  耐えうる範囲をいとも簡単に超えていく責めに逃げ腰になる勝だが、そうして自ら腰をくねらせる様は、より強い刺激を求めているようにも見えてしまう。 「ヒイィーッ! ら、らめら、腹があぁああッ、お、おおおおっ! あがあぁぁああっ!!」  前立腺と精嚢の膨らみを拳で直接ゴリゴリと擦られ、勝は衝撃とも言える目の前に火花が散るような快楽に頭を振って身悶えた。  体積を増したペニスは欲望に忠実に大量のカウパーを垂れ流し、箍の外れた勝は涎をうまく飲み込むこともできず、忘我の境地で咆哮する。 「んひぃいいいいいッ! フィ……ストおぉぉっ! いい……っ! 学園長っ、もっ、これ、たまんねぇっ……フィストいいっ! し、死ぬぅっ……!」 「死ぬほど気持ち良いのか」 「い……ひぃぃっ……! ぐ、るじ……腹ん中、犯され……ご、ごわれるぅ……っ」 「壊れてもらっては困る。この程度はまだ序の口だ」  勝は苦痛と紙一重の快感に顔を歪めながらも、不思議そうに神嶽を見やる。 「お前にはS字抜きを行う」 「え、えすじ……っ?」 「S状結腸のことだ。フィストでそこを抜けることを俗にS字抜きと言う」 (結腸って……抜けるって……う、嘘だろ……そ、んな、深くまでっ……!?)  仮にも体育教師だ。人体構造に関しても知識としてはそれなりに身についている勝にしてみれば、人より想像はしやすいのだろう、それが余計に不安を煽る。  通常のアナルセックスやフィストでは、直腸までしか挿入し得ない。  奥まで届いたところで、そこは行き止まり、肛門と同じような肉壁が行く手を阻む。これを刺激することは女のポルチオに値するが、抜けるとあればそれ以上に危険な行為だ。

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