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木村勝10-6 ※END分岐

 小一時間ほどの休息の後、勝は柔らかなベッドの上で目を覚ました。  すっかり拘束は解かれ、汗や小便でまみれた身体も綺麗に拭かれて、閑散とした病室のような場所に横たえられている。  まだ重い身体をなんとか起こせば、傍らには何の心配もしていない目で勝を見下ろす神嶽が付き添っていた。  それだけでも勝の心は穏やかでなくなるというのに、ハッと下腹部に違和感があることに気付く。  眉に皺を寄せ、おずおずと手で撫でさすりながら、勝は神嶽に縋った。 「なっ、なぁ……。あんな、ことして……俺の身体、大丈夫……なん、だよな……?」 「ああ」  腕を、あろうことか結腸にまで挿入されたのだ。身体が悲鳴を上げていることだろう。  だが、他に比べる当てもない勝には、神嶽の言葉を信用するしかない。もし何か傷がついていたとしても、そのような恐ろしいことは到底信じたくはなかった。 「よく耐えたな、勝。初めてのフィストファックで小便を垂れ流すほど感じるとは大した淫乱マンコになったものだ」 「ッ…………!」  隠しようのない現実を突きつけられ、勝はもううなだれるしかない。 「お前は俺に拳が入るほどアナルを拡げられ、直腸を揉まれ、更にはS状結腸まで到達して絶頂した。お前は今や立派な拡張奴隷だ」 「か、かく……ちょう……っ……」  わなわなと唇を震わせながら、弱り切った思考は揺れる。 (……そ、そっか……そうだよな……学園長に拡げられちまってから、ウンコも学園長のチンコくらいでかいのが出るようになったし……俺の尻はもう、男に犯される為にあるのかもな……)  勝の脳内はだいぶマゾヒズムに染め上げられていた。元から被虐願望があったかどうかなど今となってはわからない。  だが、すっかりアナルを弄り尽くされる悦びを身体が覚えてしまっている。こうなれば精神まで完全に蝕まれるのは時間の問題というところだ。 「お前の尻はもう男に犯される為にある」 (はぁ……また俺の考えてること当てて……もしかして学園長……本当に俺の考えがわかるんじゃ……。はは、はははっ……なんて馬鹿なこと考えてんだ、俺……? だって学園長は、俺が一番嫌なことをする……でも、一番気持ちいいこともしてくれる……。俺のことをこんなにわかってくれる人間なんて、今まで……。俺……もう、学園長には逆らえねぇのかな……)  一片も心身が休まる時などない。本当に地獄のような日々だった。  なのに思い返せば、神嶽にはしかるべき飴と鞭、肯定と否定を続けられてきた。  “どうして誰もわかってくれないんだ”  正々堂々勝負しない間接的な攻撃への脆さが露見することが怖くて、勝は助けを叫ぶより全てを投げ出して逃避することを選んだ。  生徒への加虐を止められぬようになっても、その自己中心的な思いは彼を長年苛んできた。  もう二度と他人に心を土足で踏み荒らしてほしくなどなかった。  それなのに、どうしても辛いとき、実のところは誰かに頼っていたかった。  勝はただ、己の力だけでは殻から抜け出せなくなってしまった故に、馬鹿な自分の首根っこを掴んで、強引にでもあるべき道を示してくれる絶対的な存在を欲していた。  どこまでも、己がより良い日常を生きる為に。高い自尊心が邪魔をした。  勝は神嶽が何を考えているのか伺うように目だけを動かして彼の顔を見た。  神嶽は笑いもせず怒りもせず、じっと勝に痛いほどの視線を注いでいる。  今の勝がこの世で最も憎く、許しがたい、そして──捻くれてしまった勝の胸の内を掌握する相手だ。  勝がわかったことといえば、“何もわからない”ことだけだった。  眼鏡越しの瞳の奥底に宿る何か。人間のそれとは思えない異質な雰囲気を醸し出し、どこか危険な魅力がある。  何故、そう感じるのかも勝に確信はなく、ため息を漏らす他ない。 「ここでは皆がお前を求めている。どれだけ弱い姿を晒してもいいんだ。その身も心も全てをこのクラブに支配されてこそお前は輝ける」 「し……支配……」 (そんなこと……俺……あぁ、でも思ってないっていうのは嘘になる……全部……学園長の言う通りにしたら……どうなるんだろう……。俺は……支配された方が……きっと、もっと……楽に……)  ここまで来れば、もうひと押し。  あとは、彼が自分の意思で踏み出せるよう、背中を押してやることだけだ。  弱った勝の頭を優しく撫でてやりながら、神嶽は彼の心を惑わせる言葉を口にした。 「奴隷になれ。お前はむごい扱いを受ける為に産まれてきた男だ」 「どれい…………俺……奴隷…………」  勝は憔悴しきった表情で、もう後戻りができない思考を続けていた。

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