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木村勝編12-1 ※犬扱い

 凌辱の日々はあっという間に過ぎていき、いよいよ炎天の季節を迎えていた。  明皇学園では厳かに終業式が執り行われ、神嶽の学園長としての生活もまた幕を閉じる。  初めから期限の決まっていた神嶽だけでなく、勝も退職することは生徒にとって意外であったようで、人気のあった二人の教師がいなくなる寂しさを、生徒達はちらほらと口にしていた。  しかしそんな彼らも、忙しない日々を生きる若者にとってはすぐに過去の人となってしまうことだろう。  事実、次に赴任する教師はいったいどういった人物になるのだろうかと噂話をするほどには、切り替えも早いというものだ。  各々夏の休暇を使って有意義な青春の時を過ごし、秋には再び穏やかな学園生活を送る。  あるいは叶うはずもなかった恋心を持て余し、またあるいは精神的加虐に苛まれる生活に嫌気がさして不登校になってしまう。全ては自然の成り行きだ。  何も変わらなかった日常。  狂わされてしまったのは、勝だけだ。  今宵、クラブでは約束のイベントが開催されることになっている。  広間は待ちわびていた宴の開催を聞き付けた会員らで沸き立っていた。  抑えきれぬ高揚から高い酒を浴びるほど飲み、既に出来上がった状態でいる者も大勢見受けられる。  神嶽は生まれたままの姿を晒す勝を舞台に上げ、四つ這いを強要させた。その首には、やはり犬用の赤い首輪が嵌まっている。  首輪に繋がったチェーンは手首と足首にも伸びており、勝はせいぜい顔を上げることができる程度の不自由な長さで床に固定されてしまう。 「そのまま大人しくしていろ」 「う、うぅ……はい……」 (あぁ……こ、こんな格好……もう絶対逃げられねぇよぉ……あは……今日はどうやっていじめられるんだろう……)  マゾ奴隷として堕とされた今、勝は大勢の会員に痴態を見られることになるだろう予感に堪らない羞恥を覚えつつも、神嶽の命令をまっとうしようと大人しく俯いている。  今宵は研究室に閉じこもりきりだったオーナーも、久方ぶりに姿を現していた。  神嶽に選ばれ、過酷な凌辱を受け続けてきた勝は今日ここに奴隷として完成する。  同時に、高齢のオーナーが自慢の研究成果を披露し、現役を引退するに相応しい、最後の饗宴となる。  オーナーはとても機嫌が良さそうな顔で笑いながら、勝の相手となるものを連れてきた。  事前のパンフレットに目を通しただけではどうにも掴み切れなかったその“相手”の登場に、騒がしかった客席が一瞬にして静まり返り──徐々にどよめきが起こり始めた。 「な、なんだ、あの動物は……?」 「本当にあんなのと交われるのか……?」 「ふん、家畜がどうなろうが構うものか。こちとら今日の為に相応の額を積んでいるからな、珍しいものが見られればそれでいいんだ」  口々に感想を言い合う客席は驚愕と愉悦の声が入り混じっている。  そんな会員らの反応を前にすると、オーナーも長い時間を掛けて用意した甲斐があると実感したのだろう、ますますニタニタと老いぼれた口元に深い皺を刻んでいく。  痩せ細った皺くちゃの妖怪爺といった外見に不釣り合いな、子供のように絶対の自信がある表情だ。 「ほれ、ジャック。今夜はお前の晴れ舞台じゃぞ。こんなに大勢の前で見てもらえるなんて、さぞや嬉しいじゃろう。良かったのう」  オーナーの歩調に合わせてぴったりと寄り添うその漆黒の物体は、彼の言葉に答えるように尻尾を振ってみせた。 「ひぃッ……!?」  勝は目の前に現れたものを見上げ、思わず喉を引き絞った。  馬ほどはあるだろうかという、巨大で筋肉質な体格。黒々としたツヤのある毛並み。そして下肢の間で揺れる、まだ勃起していないにも関わらず長大すぎるペニス。  常識ではありえない規格の立派な牡犬──と呼ぶにも難しいだろう、怪物そのものであった。  鋭い見た目はドーベルマンに近いような部分もあるが、どんな犬より優れた力、知能、忠誠心、そして何より、人間を犯す能力に長けている。  オーナーによって交配され、様々な遺伝子改良を加えられた、さしずめ地獄の番犬だ。  ジャックと名付けられたその生き物は、オーナーの非合法な研究成果の一つであった。  精悍な顔立ちをしたジャックは、犬でありながらもクラブスタッフの一員らしく、勝を一睨みして長く舌を出す。  まるで勝よりも自分が格上なのだと瞬時に理解して、せせら笑っているようだ。  そうして、神嶽には対照的に恭しく頭を垂れてみせた。なんとも調子の良い犬である。

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