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鬼塚鉄也編5-4 ※裏切り、蓮見×鉄也
「ひぅっ……!?」
優しくするとの言葉通り、蓮見は慎重にペニスを引き抜き始めた。そうして、またじっくりと押し進めていく。
緩い抽送だが、鉄也には大きなものでこじ開けられる圧迫感を、蓮見には柔らかな腸粘膜で焦らされるように扱かれる快楽を生む。
「このくらいのペースなら、痛くはないよな」
「うっ、うう……い、やぁ……くふぅっ……」
「どうなんだよ、おい」
蓮見の一際低い咎めるような声に、鉄也は慌ててこくこくと頷く。
神嶽とする時は鉄也自身も興奮し、溶けてしまいそうなくらいであったのに、青ざめた肌とは正反対の熱い肉棒を出し入れされ、下半身には異物感しかない。
吐き気さえこみ上げてきて、鉄也はオェッと胃液臭い息を吐き出した。
あまりに一方的な行為は鉄也の肉体を、精神を、確実にすり減らしていった。
(うっ、動いてる……僕の中で、修介さん以外のおちんぽが入ってっ……いやぁ……こんな……こんなのっ、嘘……。あぁっ……僕、まだ夢見てるだけっ……すごく悪い夢……お願いだから、もう……覚めてぇっ……)
もう何も見たくないというように、鉄也はぎゅっと目を瞑った。目の前がチカチカするほど強く、強く。
その瞼の裏には彼が人生で唯一、心も身体も許した男を思い浮かべる。
「……っけ……さぁんっ……」
「ああ?」
「修介さんっ……! 修介さん修介さん修介さあぁぁぁんっ!」
鉄也が堰を切ったように叫び出したことに、蓮見は首を傾げる。遂にこの理不尽な状況から逃避し始めたのだ。
鉄也があまりに神嶽の名を叫ぶもので、鉄也を気に入る会員の中には少々困り顔になっている者もいる。
だが、神嶽はこれも想定の範囲内という風に一切動じなかった。
鉄也が神嶽に依存したままでは意味がない。今まではむしろ依存させ、心を開かせる為のアクションをとってきたが、次は真逆のことをする手はずだ。
愛する人に裏切られ、他の男に犯され、だがそれを自ら求めなければならないという矛盾を、鉄也にはきちんと理解させる必要がある。
鉄也の持つ健気さはそのままに、不特定多数への奉仕を生き甲斐とする淫売へと変えてこそ、彼は完成する。今日はその第一段階だ。
「鉄也、お前は誰に抱かれている」
「しゅ、修介さんっ……!」
「俺ではない。俺は何もしていない。しっかり目の前の男を見ろ」
「いや……いや、嫌ぁっ……修介さんだもんっ……修介さん以外ありえないっ……!」
「そうか。なら、わかるまでずっとそうしているといい」
「わからなくていいよぉっ……! だってこれは、修介さんで……あぐぅっ!?」
じわじわと慣らすような抜き差しをしていたのが効いたのか、先ほどよりも動きやすくなった鉄也の直腸を蓮見が力強く蹂躙し始めた。
そうしても鉄也が痛がらないことを確認すると、今度は自分の快感だけを求めて突き込んでいく。
「ふっ、はぁっ、ひっぐぅっ、や、やめ、て……」
(や……やだっ……やだよぉっ……修介さんと全然違うっ……気持ちよくないっ……こわいっ……!)
「鉄也。目を閉じていると、チンポの感触がよくわかるだろう。形も、硬さも、熱も。本当にそれが俺だと思うのか」
(い、いやっ! そんなこと言われたらっ、意識しちゃうっ! 聞きたくないっ……考えたくないのにっ……修介さんのおちんぽがこんなのじゃないって、わかっちゃう!)
耳を塞ごうにもその手は自由でないし、何より聴き慣れた神嶽の声音は、不思議と鉄也の中にすっと入り込んできてしまう。
今の鉄也には、そんな神嶽が本当に奇妙に思えた。
男性に抵抗を感じていたはずなのに、彼だけには惹かれる何かがあった。
彼を知れば知るほど、自分だけが特別扱いをされているような気分になって、どんどん深みに嵌っていった。
神嶽という男は、一度魅入られたら最後、破滅を待つ他ない人ならざるものようであった。
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