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鬼塚鉄也編6-4 ※無理やり、暴力
(……あ……! わ、わかっちゃった……!)
ふと、鉄也の心が踊った。絶望に青ざめていた顔も、希望を見出したようにぱあっと明るくなる。
「あは……修介さん……ほ、ほんとは……こういうっ……ぷれい……? したかった、んですね……? ほ、他の男の人に抱かせたりするのも……僕の、反応が見たかったから……で……。あぁぁ……ごめんなさい……僕、鈍臭いから……気付けなくって……」
最後に考えられる唯一の可能性を思い付いた鉄也は、ぎこちなく口元を緩ませて笑い出した。
この無残な状況に合わない表情は実に痛ましい。
(そう……きっと、そうなんだ……もうそれ以外にないっ……し、修介さんは、優しい人だからっ……そんなことしたいだなんて、言い出せなかったんだ……!)
また、自分に都合の良い言い訳だ。そうでなければ潰れてしまいそうな心を、鉄也は必死に隠している。
神嶽は恐怖と快感が入り混じった感覚に小刻みに身体を震わせる鉄也をしばし見つめ──片手を振りかぶった。
「あうっ!?」
バチンと乾いた音を立てて、鉄也の色白の頬に平手打ちが炸裂する。
純然たる暴力に、鉄也は何事かと目を剥いた。
「お前が愛した男は、こんな風にお前の嫌がることをする男なのか」
「────ッ!!」
新たに溢れてきた涙が一筋頬を伝う。赤く腫れ上がった皮膚が、鉄也にじんわりと痛みを、目の前の男にぶたれたことを、正直に訴えた。
「うぅっ……! ひぐっ、ぐすっ……ううえぇぇぇっ」
(……そうだ……違う……修介さんは……こんなことしないっ……僕の嫌なことは、絶対にしないっ……どこ……修介さん……どこに行っちゃったのおぉっ……)
鉄也の身体が、自分に危害を加える男から逃れようと本能的に身じろぐ。
神嶽はその華奢な下肢を押さえ付け、獣のごとく激しく腰を動かした。
「ひぁぁあああああっ!? もう許してっ! これ以上酷いことしないでぇっ……! 痛いっ! あぁっ駄目ぇ……!」
柔らかな肉穴をパンパンに膨れた肉棒で容赦なく掘り抜いていく。
強いピストンをされるたびに痩せているせいでキュッと引き締まった薄い尻が打たれ、鉄也は仰け反った。
「鉄也。お前が好きだったのは誰だ」
「修……介、さんっ……」
「お前がいま最も恐れるのは誰だ」
「ひっ……ひぅっ……修介さぁんっ……!」
「現実を受け止めろ」
(やっと人並みの幸せを手に入れられたのかなって……修介さんとなら、こんな僕でも明るく生きていけるのかなって、心の底から信じてた……なのにどうしてこんなことにぃっ……!!)
鉄也の心がただひたすらに悲しみに染まっていく。どれだけ願えど時間はもう戻ってくれない。鉄也の生きる道は神嶽に見出されたその瞬間から約束されている。
神嶽は彼の意に反して勃ってしまっているペニスを掴む。
「裏切られた男に犯されてはしたなくイッてしまえ。お前はいずれ誰に犯されても涎を垂らして悦ぶ奴隷になるんだ」
「いっ……きたくなぃっ……いきたくないぃぃっ! そんなの嫌あぁぁあああああああっ!!」
内側から鉄也の弱いところをゴリゴリと擦りながら扱き立て、一方的にアクメへと追い詰める。
大声で泣き喚きながら、しかし浅く吸い込んだ息がぐっと詰まると、彼のペニスからは嫌々ながらに我慢のできない若い子種が飛び散った。
それとほぼ同時に神嶽の方も鉄也の中で大量の汚濁を注ぎ尽くした。
「はぁっ……あぁ……えぐっ……も、もぅ……」
無理やり射精させられた疲労と、腹の中に注がれた熱に荒い呼吸をしている鉄也が、哀願の目を向ける。
ここにきても鉄也はまだ、彼の同情心に訴えれば事をやめてくれるかもしれないと思っていた。
「何を言っている。まだだ。お前が立場をわかるまで続行する」
当然のように言い放たれた言葉が、鉄也のひび割れた心にとどめを刺した。
(……修介さんが……いなくなっちゃった……)
鉄也の身体が、抵抗する気力をなくして更に脱力していく。もう指の一つも動かせない。
夢の中の優しかった恋人を追いかけるように、どこか遠くを見つめている。
放心状態のまま、鉄也は再び神嶽に揺さぶられ始めた。
「……わ……わかり……ました……」
めちゃくちゃになるまで乱暴され、服も乱したままいつまでもぐずぐずと泣いていた鉄也が、ようやく蚊の鳴くような声で呟いた。
やっとの思いでよろよろと起き上がる鉄也を、一糸の乱れもない神嶽が機械のように無感情な目で見下ろす。
「僕の好きだった修介さんは……最初からいない……全部っ……夢だった……」
初めて変われるはずだった。
理不尽な暴力に怯える環境から抜け出せるはずだった。
人より不幸な生い立ちにいた鉄也にはこれから、それを凌駕する愛と希望に満ち溢れた未来が待っているはずだった。
「でも……あなたは……! あなたは、ここに、いますっ……!」
掴みかけた幸せを真っ向から引き裂かれた鉄也の人生の歯車は、確実に狂った方向へと動き始めてしまった。
「────それでいい」
悲愴な顔を隠すようにうずくまる鉄也に、神嶽はその目を僅かに細めた。
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