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鬼塚鉄也編7-3
「酷いです……普通にお友達と話すのも許されないなんて……っ。みんなが……優子ちゃんが何をしたって言うんですかぁっ……」
(優子ちゃん……泣いてた……僕、なんてことをしたんだろう……もう優子ちゃんに合わせる顔がないよっ……)
自らの口からついて出たこととはいえ、酷い言葉を選んで言ってしまった後悔は猛烈に噴き上がって鉄也を苛む。
「俺の命令に逆らったところで、ただあの女が同じ目に遭うだけだ。大切な友人が、同じ男に牝としての才能を開花させられる。嘘で塗り固められた日々がどんなに幸せだったか、そしてどんなに深く絶望したかも共有できる。むしろ喜ばしいことではないか」
「そんなこと喜べるわけないっ……! どうして酷いことばかり言えるんですかっ……うぅっ」
(優子ちゃんは女の子だからっ、修介さんにされたら赤ちゃんできちゃうかもしれないしっ、たくさん怖い目にだって遭うかもしれないって……そう思って、すごく嫌なのに……我慢したんだもんっ……)
女というものの何よりの弱点は、子を宿すようにできていることだ。
見ず知らずの男に弄ばれただけでもたまらなかった鉄也であったのに、それで望まない妊娠をする恐怖ときたら、到底想像もできないほどおぞましいものであろう。
普段から自分もいつかは……と家庭を築くことを夢見る彼女を知っているだけ、鉄也は寿命がすり減りそうなほど気力を消耗してしまう。
「嬉しくないのか。ああ、俺があの女に手を出せばお前はもう用済みだからな。それはそれで寂しいというわけか」
「えっ……?」
さも当然のように残酷な末路を言ってのける神嶽を、鉄也は不安そうに見上げた。
(用済みって……僕……もしそんなことになったら、どうなっちゃうの……)
「そ……そんな……」
「少なくとも自分を裏切った男からは解放されるんだ、その方が清々するだろう。それとも、お前は俺にまだ未練があるとでも言うのか」
「あ……ぁ……」
一見して臆病な性格だとわかる鉄也の顔がサッと青ざめ、渇いた唇がわなわなと震える。
今現在の神嶽への想い。鉄也が神嶽に裏切られてからずっと悩み続け、幸せだった時間を思い出しては止めてしまうことを繰り返していた。
が、四六時中彼のことを考えてしまう時点で、既に答えは出ているようなものだ。
(僕は……まだ……修介さんのこと、好きなの……? それとも……。わ、わからない……でも……どんな理由であれ修介さんに捨てられるって……僕を見捨てて他の人とも平気でエッチなことするんだって思ったら……そんなのは……! や、やっぱり……嫌だっ……!!)
「……あるんだな、鉄也」
「うっ……うぅぅぅっ……」
「あれだけその身体に現実を刻み込んでやったにも関わらず、俺を忘れられない。憎むことすらできない。お前のようなおめでたい頭の人間はせいぜいクラブの好色漢共に愛嬌を振りまいてやるのが似合いだ」
「や、やめてっ……それ以上……言わないで……ください……」
図星を突かれ、鉄也はずるずるとその場に崩れ落ちてしまいそうになった。
この場から逃げ出したくとも、もう足が動かない。それに、何もかも放り出せば不幸な人間が増えるだけだ。
本当にこの行為を止めるにはいよいよ神嶽を殺すか自分が死ぬしかないが、鉄也にはそんな真似をする勇気もないし、そこに辿り着くことだけは理性が必死に押し止めていた。
「自らの浅ましさを理解できたようだな。さあ、始めるぞ」
宣言してから、神嶽は鉄也の胸倉を掴むと、無理やり服を脱がしていく。
シャツと靴下だけの姿にされてしまっても、鉄也はもう諦めたように俯いていた。下手に抵抗をしてまた殴られでもしてはたまらないからだ。
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