112 / 249

鬼塚鉄也編8-3

 一人目は、初めから神嶽本人であった。アナル以外には触れることなく、柔らかくなったそこに亀頭をあてがい、ゆっくりと張り詰めたペニスを沈めていく。 「はふっ……んぐ……うぅううっ!」 (お、大きい……! 誰なのっ……こわいっ……)  真っ暗闇の中、質量のあるもので肛門を押し拡げられ、鉄也は緊張してぎゅっとペニスを締め上げる。  神嶽には何度も抱かれていても、まだそう男の経験があるとは言えない身体だ。神嶽は慣らしていくようにじっくりと腰をグラインドさせて鉄也を焦らす。 「さて、では問題です。これは誰のチンポでしょう?」  鷲尾に言われて鉄也はハッと耳を澄ましてはみたが、鷲尾以外は声を発しない。  それに神嶽は息を乱すことすらなく、鉄也の判断は正に肛門の神経だけに委ねられる。 「はぁっ……はぁっ……う、んんんっ……」 (これ……なんだか、気持ちの良いところにあたってる気がする……僕、この感覚知ってる……ぁ……)  少し悩んで、鉄也は答えを導き出す。 「これっ……! これ、修介さん……! ねっ、そうでしょっ!? ふ、普通、いきなり正解がくるなんて思わないしっ……そうじゃなくてもっ、この感じ……修介さん以外には、ありえないっ……!」  普段は内気な鉄也だが、これだけは自信たっぷりに言い放った。  例え適当に言っても最初は正解にさせるつもりであったが、本当に当ててしまうなど何とも都合が良い。  神嶽が頷くのを確認してから、鷲尾はさも驚いたように高らかに声を上げた。 「なんと……出ました、いきなり大正解! 一発で当ててしまうとは、これが愛のなせる技なのでしょうか? いやはや素晴らしい。皆様、是非とも拍手をお願いいたします」 「あぁっ……」  相手が神嶽であること、そしてきちんと判別できたことに鉄也は安堵の吐息を漏らした。 「んっ……ふぁ、あ、修介さん……僕っ、ちゃんとわかりましたぁっ……あ、あぁんっ」  神嶽だと思うとやはりいくらか抵抗感も薄れるのか、鉄也は切なく喘いだ。  神嶽の的確な責めは鉄也の身体に教え込んだ性感を呼び起こし、腸粘膜を熱くとろけさせていく。アナルを抉られるたびにビクビクと揺れる鉄也のペニスは、早くもガチガチに屹立して先走りを滴らせていた。  だが、いつまでも神嶽一人が独占していてはゲームにはならない。鉄也が官能に呑まれる前に、軽く抜き差ししてから、じりじりと引き抜いていった。 「っは、ふっ……! ま、待って……!」  燃え上がる直前で快楽が急激に引いていく。鉄也は本能のままに神嶽を求めてしまい、ハッと口を噤んだ。しかしもうこれで終わりだと思うと、力も抜けていく。  そんな鉄也の思いとは裏腹に、「たかだか一回当てただけでは満足できない」「こっちは今日の為に高い金を払っているのに」「ただのまぐれかもしれないじゃないか」と、会員達からの野次が飛んだ。  神嶽が事前に指定している通りの展開であるが、鉄也がそれを知る術はない。 「そ、そんなことないっ……! 僕は本当にわかっています、修介さん……! だからっ、もういいですよね……? ねっ?」  好き勝手なことを言う会員達にムッとしながらも、鉄也は必死に訴える。  神嶽は健気な鉄也の期待を裏切ってやるために、わざと少し考え込むように唸ってみせた。 「……そうだな。やはり一回ではとても信用ならない。もう一度だ」 「えっ……?」 「ふうむ、支配人もそう仰られていますし、続行ですね。さあどんどん参りましょう」 「う……そ……」  本当にこの程度で終わると思っていた鉄也はたいがい神嶽を、このクラブを甘く見ている。

ともだちにシェアしよう!