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鬼塚鉄也編12-1 ※女装
終業式を終え、世間はすっかり夏本番の賑わいを見せていた。
神嶽は短い間ながらも学園長としての務めを果たして学園を去った。
今後正式に選出される人間に後を任せても、神嶽が引き起こした凌辱行為が公になることはない。
杉下の一件で弱みを握られている理事長はもはやクラブの完全なる操り人形と成り下がり、次期学園長すらもクラブの息のかかった者となる手はずだ。
次期学園長にはただただ神嶽の表向きの業務を引き継ぎ、単調な学園生活を送ってもらうことになる。
そうして、無関係の生徒達にこれからも続く当たり前の平穏な日常をくれてやり、皆の記憶から神嶽という存在しない男の記憶を徐々に薄れさせていくことが彼の大きな役目だ。
明皇学園が着々とクラブに取り込まれつつあるその裏で、当の被害者である鉄也も、忽然と姿を消していた。
クラスメイト達が鉄也が去った事実に気付くのは、新学期が始まってからのことになる。
クラブのVIPルーム。発情を隠せぬ男達にぐるりと取り囲まれたその中心に鉄也はいた。
ほっそりとした首には上品な淡いピンクの首輪を嵌められ、会員の要望に沿ったコスチュームが着せられている。
僅かに身じろぎをしただけで下着が見えてしまうほどの極端に丈の短いスカートが情欲を煽る下世話なメイド服に、しなやかな脚をより細く美しく見せる白のガーターストッキング。更に頭には、猫の耳を模したカチューシャまで身につけられている。
鉄也が生まれ持つ淑やかさとは真逆の卑猥な格好だが、そのアンバランスな部分が堕ちるところまで堕ちた彼の悲愴な状況を際立てる。
今の鉄也は、クラブの所有物。クラブにいる全ての人間が彼の主人であり、その命令は絶対的な力を持つ。
そして、今宵は研究室にこもりきりだったオーナーもまた、その場に居合わせていた。
会員達の邪魔にならないよう隅のソファーに腰掛け、傍らに立つ鷲尾と何やら小声で話をしながら、信頼する支配人の手掛けた奴隷がどこまでこのクラブにとって有益であるかを見定めようとしている。
「鉄也、今夜はVIPの会員様だけでなく、このクラブのオーナーもお前の奉仕姿をご覧になる。決して粗相をしてはいけないぞ。わかったな」
神嶽は鉄也の耳元でそう言って脅してから、ビジネス用の誠実な顔つきになって集まった会員一人一人の顔を見渡した。
皆、鉄也が身売りする中で一度は相手をしたり、その様子を記録した映像で見たりしている。鉄也がここまで堕落することとなった過程を知っているだけに、期待に満ちた顔で待っていた。
(あ、あぁ……僕……またこんなにたくさんの男の人に抱かれるんだ……)
鉄也は神嶽を見上げ、僅かに哀願の目を向ける。
もはや神嶽以外の男と交わることへの嫌悪感は薄れてしまっているが、どうしても数が多いぶん、不安はあるようだ。
だがそれも、自身の身体への負担を考えるよりは、全員をきちんと満足させられるだろうか、といった心配の方が強かった。
そんな鉄也の肩を叩き、神嶽はこのクラブの支配人として然るべき言葉を商品に投げかける。
「さあ、鉄也。皆様にご挨拶だ」
鉄也は観念したように俯いた後、会員達と向き合った。
「……は、はい……。僕は、皆さんの、奉仕奴隷……おちんぽ大好きで、ザーメンが餌の変態です……。皆さんのものなら、チンカスもおしっこもうんちも何でもおいしく頂きます……ご命令があれば、どんなことでもしますっ……。ですから……あぁ……ど、どうか、可愛がって……くださいませ……」
服従の台詞を発する羞恥に打ち震えながら、ぎこちなく三つ指をついて頭を下げる鉄也。
その支配欲を掻き立てる健気な言い分に、欲望渦巻く男達はニタニタと卑しく笑った。
かくして、狂乱の夜が始まった。
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