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鬼塚鉄也編END-2 ※男体妊娠
組長としばし談笑し、指定の時間になると、鷲尾は司会をする為舞台袖に立った。
「大変長らくお待たせ致しました。さあ、いよいよ主役の登場です」
仰々しい機械が準備された舞台には、分娩台に拘束された鉄也が運ばれてきた。
その脇には担当医であるオーナーと、数人の助手、それに夫さながらに彼の手を握っている蓮見が付き添っている。
「うっ……うぅぅ……く、苦しいッ……はぁっ、はあぁ……いつ、終わるの、怖いよぉっ……も、もういや……ひいぃっ……」
現れた鉄也は既に汗をびっしょりとかき、その憂い顔を涙でいっぱいに濡らしていた。
本格的な陣痛が始まってから数時間。現在、間隔は五分と短くなり、そろそろいつ産まれてもおかしくはない状況になった。
最後の奉仕以来、鉄也はクラブに監禁され、数々の肉体改造を強いられてきた。
ホルモン投与の影響でその身体は以前より男性らしさが薄れてしまっている。胸板は散々に吸引されたせいで女のようにふっくらと丸みを帯び、乳首は硬くしこって存在を主張している。
更に、異様なまでにせり出た下腹部。元より痩せている鉄也ではその腹はずいぶん目立ち、彼が紛れもなく妊娠し、臨月であることを表していた。
「オーナー、意気込みのほどをお聞かせ願えますか?」
鷲尾にハンドマイクを向けられ、オーナーは少し面倒臭そうな顔をしたものの、老人らしいしゃがれ声で咳払いする。
「……ええ、ゴホン。とにもかくにも、その目で見るのが手っ取り早い代物ですぞ。以上」
「それじゃ面白味がないでしょう。……申し訳ございませんね。愛想の悪い偏屈ジジイではありますが、腕は確かですのでご安心を」
喧嘩しつつも仲の良い祖父と孫のような寸劇に客席から笑いが起きる。
オーナーに一瞥されるも、悪びれない顔で鷲尾はよく通る声を高らかに張り上げた。
「本日は皆様に世にも珍しい少年奴隷出産ショーをご覧に入れます。いやはや、男で実現させるにはなかなか骨の折れる研究でありました。使い捨てたマウスの数も皆様ご承知と存じますが……今宵の宴は、我がクラブにとって素晴らしい未来への希望となることでしょう」
いよいよ物珍しいショーが見られるのだ……好色な会員達の期待の拍手に包まれた。
それより、鷲尾の言葉を聞いて絶望的な表情になったのは鉄也である。
十ヶ月前のあの日、全身麻酔をされて体内に人工の子宮を埋め込まれた鉄也であったが、今日までの間は診察と言う名目の肛門拡張などはあったものの、性処理目的のセックスは行われずにいた。
初めは家畜のそれを応用した借りものの器であったが、特殊な細胞技術を用いた結果、子宮は鉄也の肉体で同化し確かに彼の一部となった。
つまり今の鉄也は、男でありながら女の生殖機能の一部をも有する存在となった。
人間の未知なる適応力とは何とも素晴らしく、興味深く、これからも人体の神秘を解明すべくまだまだ死ねたものではないとオーナーも褒めちぎっていたものだ。
当の胎児はと言うと、身体こそ平均に比べて小さいものの、健康状態についてはそれほど心配なく元気に動き回っていることが検査でもわかっていた。
胎児が子宮内でどうやって育つかは、鉄也も一般知識として何となく知ってはいた。
だが、まさかそれを自分が経験するとは想像もしていなかった。男である以上、できるはずもなかったのだ。
非合法な研究を好むオーナーと、それを試す場所でもあるクラブさえなければ……。
「う……嘘っ……僕……ほ、本当に、ここでっ……!?」
鉄也は顔を恐怖に引きつらせ、わなわなと震えが止まらなくなる。
出産のその瞬間さえも見世物にされるなど、全く聞かされていない。
「ああ、もちろんこの母体……と言って良いのでしょうかね、これも肛門から産ませるよう改造済みですから、皆様どうぞじっくりとご覧ください」
「ひぐぐぅうううっ!? そ、そんなのいくらなんでも無理っ、絶対にっ、無理ですうううっ!!」
「は? じゃあ殺すのか? お前の大好きな“修介さん”のガキかもしれねえのに?」
「────ッ!!」
蓮見に言われると、鉄也はたちまち言葉を失ってしまう。
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