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鬼塚鉄也編END-6 ※男体妊娠、死産、グロ ◆完結
「はぁーあ……もったいねえことしやがって……ンハッ、この程度で死ぬような根性なし、支配人のガキな訳ねえだろうが」
残酷に呟きながら、小さな亡骸を見下ろしていた蓮見がその身体を革靴で思い切り踏み付けた。
九十キロ近い巨体が全体重をかけ、まるで煙草の火を潰すように擦り付けると、まだ柔らかい頭は陥没し、手足が明後日の方向に曲がる。
鉄也が死に物狂いで産み落とした赤ん坊は、人間とは思えない──ただの肉の塊のように、めちゃくちゃにされていった。
「うげっ、汚えっ、こうすると本当にウンコみてえだなあ? ……ま、ウンコにしちゃあちょっとグロいけどな」
蓮見がその怪物じみた死体と化したものと、靴の裏についた肉片とを交互に見ながらせせら笑う。
最も愛すべき我が子の無残な姿。虫の息であった鉄也の空虚な目が、力なく瞬きをする。
「……め、なさい……」
震える唇の間から、か細い謝罪の言葉が漏れ出す。
「ごめ……なさいっ……僕……赤ちゃん……死なせっ……こ、殺してっ……ごめんなさいっごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいいいいいいいっ……」
いくら自責したところで、死んでしまったあの子は二度と戻って来ない。大粒の涙はひとりでに、とめどなく溢れ零れ落ちた。
「こ、今度は……元気な赤ちゃん……産みます……ここにいるっ、皆さんの……赤ちゃん……産んでみせますからぁっ……! だからっ……だからぁ……」
おぞましい地下施設で生きる日々に耐える為、必死に心の拠り所にしていた最後の希望まで打ち砕かれた。
彼にはもう何も残っていない。
鉄也の守ってきたもの全てが、この一夜にして、壊れてしまった。
「種付けしてっ……! 愛の結晶孕ませてええええええええっ! あひっ、あっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」
鉄也は遂に発狂し、高らかに笑い出した。
「僕が産むのっ! 奴隷生産機になるっ! 男でも女でもみんなみんなみんな生まれつきの奴隷になってご奉仕させるのおおおおおおおおおおっ!!」
それが、健気な鉄也の口から放たれた正真正銘の奴隷宣言だった。
広間が興奮冷めやらぬ狂気の歓声に包まれる中、上層からは、惨劇をじっと見つめる男がいた。
狂った奴隷に何を思うのか。ここまで来ても、何一つ生まれる感情はないのだろうか。
間近に居ながら鉄也に姿を見せることも、声を掛けることもない。
神嶽修介と名乗っていた男は淡々と、精神を崩壊させてしまった鉄也の姿を視界に映している。
その鋭い瞳が、彼が完全に心を閉ざす前に残った思考を読み取ろうと、僅かに細まった。
(そうすればっ……辛くない……一人じゃない……。みーんな僕が愛してあげる……。愛を知って……ずっとここで、幸せに生きようね……)
実に良い心掛けである。
そんな風に瞬きをして、神嶽はくるりと踵を返して去っていった。
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