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如月司編4-1

 神嶽の呼び出しで放課後の学園長室にやって来た司は、彼を見るなり深々とため息をついていた。  脅されて以来、学園では学業に集中することだけを考えるようにしていても、彼の顔を見るとどうしてもアナルを犯され、その上絶頂までさせられてしまった屈辱の記憶が蘇る。もうこの部屋にいること自体が司にとっては悪夢のようである。  それでも、逆らうことはできない。何よりは家の為。行方知れずとなった使用人の為。辱めを受けた自分自身が報われる為にもだ。  嫌なことであればそれなりに早く済ませてもらおうと、司はベルトに手を掛ける。が、それは神嶽が止めた。 「残念ながらアナルはなしだ。今日は、奉仕を覚えてもらう」 「……奉仕、だと?」 「そうだ。今日のところは俺で練習だが、次はあの施設で客を取らせるからな。しっかりその頭と身体でやり方を学ぶんだ」  司の普段通りのクールな表情がほんの少し陰る。また非合法な場所に連れて行かれ、凌辱が待っているということだ。  司は自身を抱くように腕を組んで考え込む。 「……あの施設は一体なんだ」 「あまり詮索しない方が身の為ではあるが……そうだな。お前とは深い付き合いになる場だ、特別に少し教えてやろう。あそこは金持ちの悪趣味の為のプライベートクラブだ」 「プライベート……クラブ……。ふん、なるほど。急に金を持った低俗が好みそうなことだ。それなら、お前がこの学園に来た目的は。理事長とはどういう関係なんだ」  神嶽の言うことのどこまでが真実であるのかわからない上に、個人レベルでは済まない犯罪ならば司が真っ先に考えるのは理事長がクラブに内通している線だ。  杉下の急逝後、理事長の推薦あって抜てきされた、実に優秀で信頼に値する男。そこは現在の明皇学園にとって大切な出資者でもある如月家の人間として、司も話は聞いている。 (私だって、できることなら理事長がこんな鬼畜と繋がっているなんて疑いたくはないが……こいつのことだ、なにか弱みにつけ込んでいるかもしれない)  西條家と親交の深い司からすれば、隼人や優子と同様、とりたてて変わった性格という訳でもない理事長の人柄はよく知っていて、その推理もあながち間違いない。  だが、全ては理事長がクラブに非人道的な依頼をしたせいで起きたこととまでは辿りつけなかった。良くも悪くも育ちの良さが出てしまうのか、司は悪事についての想像力は欠けていた。 「愚問だな。神嶽修介は、理事長の友人であり、明皇学園高等科の新しい学園長。そこに大それた目的などない。お前も少しは俺の身辺を探ったならわかっただろう」 「……どこまで私を監視しているのか知らないが、お見通しという訳か。……ああ、確かに私はまだお前の素性を掴めていない。だが、お前が一筋縄ではいかない存在であることはよく理解したつもりだ」  司なりに神嶽の経歴を洗ってはみたが、そこには若くして学園長にまで登り詰めた“神嶽修介”の華々しい人生があっただけで、“目の前の男”が実に抜かりのない人間だと実感しただけだ。 (こいつは本当に何者なんだ……。まあいい、例え何者であろうが、こんな……性欲ばかりの男に私が臆することなどない……。今はまだ、私を従えた気になって悦に入っていればいいさ)  神嶽のまるで他人事のような物言いにも薄気味悪さを覚えつつ、司はまだまだ気丈だった。 「物分かりの良い生徒で助かるな。さあ、お喋りはこのくらいにして、始めるぞ」 「……今日は具体的には何をさせたいんだ」 「お前にはフェラチオをしてもらう」 「……フェラ……チオ……?」 「本当に同じ男かと疑うほどの純朴さだな、司。チンポをその口で舐めしゃぶって射精に導くことをフェラチオと言う」 「な……なっ、舐めしゃぶるっ!?」 「正確にはもう咥えたことはあったな。性に疎いお前の為に保健の特別授業でもしてやろうと思ったが、余計なお世話だったか」 「なにが授業だっ! 馬鹿にするのもいい加減にしろっ……あんな卑怯な手段でさせておいて……!」  クラブでの凌辱の際、蓮見と柳に口も犯されたことを思い出し、司は抑えきれない怒りを露わにする。  精液独特の何とも言えぬ生臭さと味は、何度歯を磨いても、口をゆすいでも、潔癖気味の司には気になって仕方がなかった。 「初めてのチンポの味はどうだったんだ」 「そんなもの……覚えていないっ……」 「そうか、まあ何せ二人分だったからな。致し方あるまい。だが、覚えておけ。なにも突っ込めるのは尻穴だけではないぞ。お前の口をマンコとして使えるようにしてやる」  それがさも当然のことのように言われ、司はぎょっとして固く唇を結んだ。口を性器扱いされるなど初めての衝撃と屈辱である。

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