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如月司編4-3 ※フェラ
(……勃ってきた……それに、なにか出てきて……。ううっ、これは……カウパー氏腺液……。酷い味が口中に広がるっ……もっ……舌が麻痺してきそうだ……)
「んんっ、う……こ、ここ……? お前は、ここが……気持ち、良いのか……?」
「そういうことだ。続けろ」
(……ふんっ……強がって……。でも、そうか……こいつもここは弱いのだな……今に見ていろ……)
高圧的な神嶽にも身体の反応があることに、司は少し安心感を覚えながら、くびれに舌を差し入れて、そこを円を描くように重点的に舐め回す。どうにも負けず嫌いな性格である。
「いいぞ、そのまま咥えてみろ。口を窄ませて頭を前後させるんだ。一応言っておくが歯は立てないよう気を付けろよ」
「……わかった」
ストローを咥えるように慎ましく先端を口に含むと、ゆっくりピストン運動を開始する。
「ぷっ……ふぁ……じゅるっ、ちゅうっ……はっ、ふぅ……あむうぅぅ……」
さっさと神嶽を絶頂させて終わりにしようと強気になっているものだから、唇が雁首を越える瞬間、色っぽい吐息が漏れてしまうことに、司は気付いていない。
(……ん、また、大きく……ふ、そうだな。ここは男の急所なんだ……みんな、弱くて当然っ……。それに、こいつなんて私を犯してしつこく射精した異常性欲者だ。ここを責められれば……さすがのこいつもきっとボロを出すはずっ……)
神嶽のペニスは司が必死に奉仕していく中で、どんどん膨張し、熱を帯び、我慢汁を垂れ流して司の口内を汚している。
人より我慢強い方である司でさえ、快楽だけはどうしようもなかったのだ。神嶽だってさぞかしみっともない表情で耐えているに違いないと期待をして、司は彼を見上げる。
(え……? な、なんだ……この男……)
しかしそこにあったのは、蝋人形のようにぴくりとも動かない顔だった。
悦楽に浸るどころか、じっと司を見つめて何かを思案するように首を傾げている。顔の筋肉の動きや、身体の力のこもり方からはただ我慢しているだけにも見えない。
不感症というには、きっちり反応はあるのだし、そこだけ別の生き物なのではないか──しかしそのような非現実的なことはあるはずがない──とさえ思わせるようなその不気味な態度に、司は血の気が引く思いだ。
人間が自分の命を脅かしかねない強い生き物に遭遇した時に感じるような、本能的な怯えである。
神嶽とばっちり目が合ってしまい、司は視線を元に戻した。鳥肌が立ちそうになるのをぐっと抑えながら、目先の奉仕を続ける。
「どうした、化け物でも見たような顔をして」
「いや……何でもない……。んんぅっ……それより……まだ、出そうにないのか……? あふっ、んちゅっ……」
「ああ、少し物足りない。もっと積極的に舌を使え、ピストンしながら裏筋を舌で転がすように舐めるんだ。バキュームも効果的だぞ。頬を凹ませて精子を搾り取るように思い切り吸い立てる。そうやっていやらしい音を鳴らしてその気にさせてみろ」
「……っ、注文の多い奴っ……」
「早く終わらせたいのだろう」
「それは……そうだが……」
「お前ならそのくらいすぐに会得できるさ。どうせだからリップサービスも付け加えてもらおうか。今お前がしゃぶっているものを褒め称えるんだ」
(褒め称える……だって? こんな、醜悪なものを……。はぁっ、くそっ、またそんな風に冷たい目で私を見て……言えば良いのだろう、言えばっ……)
神嶽の痛いくらいに強い視線が、司にはもううんざりだ。
半ば自棄になりながらも、いったん口から出し、わがままな主人を宥めるように根元を扱きながら、司なりに最上級と思しき褒め言葉を紡ぐ。
「……学園長先生の逞しい男性器にご奉仕することができて光栄に存じます」
「それから」
「そ、それからっ……。…………ど、どうか、この卑しい奴隷に、絶頂の証……せ……精液をお恵みください……」
(ふん、こうでも言えば満足か? ああ……本当にこんなもの、無くなってしまえばいいのに……)
普段であれば目上の者に対する社交辞令などいくらでも湧いてくる司だが、なにぶん慣れない淫語のせいでほとんど棒読みだ。
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