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如月司編6-4 ※羞恥

 ここで終わればいったい何のために死にたいほどの屈辱に耐えてきたのか。全ての努力が泡と消えてしまう。 「どうする、司。やる気がないのならこのまま一方的に犯されていればいい」 「う……ぐうぅ……」  神嶽に立ち向かうことを選んだ以上、途中で放棄することだけは、司は絶対に許せなかった。負けず嫌いもここまでくると愚かしくもある。  しかし、改めて卑しい真似をしなければならない羞恥心に司は躊躇した。  その一瞬の迷いが、あるいは悪魔が神嶽に味方したのかもしれない。  二人のすぐ近くでシンプルな着信音が鳴り響いた。椅子に置かれた司の鞄の中で、携帯が鳴っている。神嶽は迷いなくそれを取り出すと、画面に視線を落とした。  着信相手は下田と表示されている。司と同じクラスに属し、生徒会では副会長を務めている男子生徒だ。あまり群れることを好まない司でも、人懐こい彼とは比較的一緒にいるところをよく見かけられていた。  どこか人を寄せ付けない雰囲気を纏った孤高の生徒会長を支えるのがそういった人間とは、なんとも均整の取れた組織だ。 「出ろ」 「なっ、何を言って……!?」 「友人からだろう、俺のことは構わず出てやればいい」  ふるふると首を左右に振る司に構うことなく、神嶽はスピーカーフォンに切り替え、通話ボタンを押すと、司の顔の前にそれを見せつけてやった。  何の躊躇もないその行動を非難する暇も与えられず司は息を呑む。  スピーカーからは司の状況などまったく想像もしていない、焦燥した声が聴こえてくる。 『あっ、如月!? まだ生徒会室に居るか!?』  聴き慣れた副会長の爽やかな声に、司も背に腹はかえられぬと平静を装うことを決めた。 「……あ、ああ。どうしたんだ」 『実はどっかにストラップ落としたみたいでさ……教室出る時はあったから、たぶん生徒会の前後で失くしたと思うんだけど、それらしいの見なかったか?』 「す、ストラップ……?」 『あ、特徴とか言わないとわからないよな、ごめんごめん! えーと、色はシルバーで、二つ合わせるとハート型になるデザインのやつなんだけど』  一刻も早く電話を切りたい司の事情など知り得ない副会長は、話しながら頭を整理するように説明し始めた。 『いやぁ、実は彼女とのペアで買った限定ものでさ。小さいことかもしれないけど、失くしたなんて言ったら俺の立場ねぇよぉ……』 「────っぅ、く……」  司の身体にぐっと力がこもり、固唾を呑み込む。通話中だというのに、神嶽があろうことか腰の動きを再開したのだ。 『ん、如月? ちゃんと聞いてる?』 「あ、ああ……聞いている……た、大切な……ものなんだな……」 (ま、まさかこんなことまでっ……あぁっ、嫌だっ……! 音が聴こえてしまったらどうするつもりなんだっ……)  司は眉間に目一杯の皺を寄せ、目で今すぐやめろと抗議する。緩い抽送をされるたび、結合部からはグチュグチュと淫猥な音が鳴っている。  だが、副会長も副会長で恋人との思い出の詰まったものを失くしてしまった罪悪感に焦っているようで、司の異変に気付くことはない。 『そうそう。だから、今から戻って生徒会室も探したいんだけど、もう少しだけ鍵開けて待っててくれないか?』  今から戻る。彼がここに来てしまう。彼が、この凌辱に巻き込まれる。  途端に司はぞっとし、いつになく必死の形相になった。 「で、でも、私も帰るところで……! あ、明日では駄目なのか」 『明日は休みだろー。なあ明日デートなんだよ、つけてないと絶対怪しまれるって! 俺がフラれても良いわけ? なっ、頼むよ、少しだけ協力してくれって!』 「っ……わ……わかっ、た……私も……さ、探して、みるっ……」 『ありがとな、助かるよ! すぐ行くから!』  ようやく電話が切られると、神嶽は先端近くまで一気に引き抜き、そこからまたズブリと重たく押し込んだ。 「ンンゥッ……! や、やめろっ……! なんて、ことを……お前は本当に、何を考えてっ……」 「さあ、時間との勝負だ。このまま大人しく犯されてあいつに痴態を見られるか、恥をかなぐり捨ててでも俺をイカせてみせるか。手始めにあいつもお前と同じ目に遭わせ、生徒会ごとクラブに放り込んでしまうというのも面白いかもしれないな」 「この卑劣漢っ……! ぁっ、ぐぅっ! わ、わかった、からっ、もうやめろ……っ! や、やれば……いいんだろうっ……!?」 (他の生徒まで盾にするなんてこいつはどこまでっ……! が、我慢するしかない……生徒達の安全は私にかかっている……)  こうなってはもう自分の問題だけではない焦りが、司を追い詰めていく。悔しそうに目を伏せると、司は自らの意思で尻を突き出し、ぎこちなく動かし始めた。 「ううっ……早く、イケッ……今すぐ……はぁっ、は、早くっ!」 「相手にイッてほしい時はどう頼むかもう忘れたか」  いやらしい言葉を口にして気分を盛り立てろとの命令は、司ももちろん覚えている。  身体だけでなく言葉でも淫売のような態度をとらなければならない現実は司にとってこの上ない屈辱であったが、彼ももう切迫詰まっていた。 「うぐぐぅっ……ど、どうかぁっ、私の、この……け、ケツマンコに……熱くて汚いザーメンくださいっ……」  しかし神嶽は司の尻を掴み、その不器用なピストンをも阻んだ。口には出さないがその程度では足りないと言っているようだ。

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