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如月司編9-6 ※嘔吐

「お前は自分を高尚な人間と思っているようだが、これでもそうだと胸を張れるか。見当違いも甚だしい男だ。救いようがないほどの色狂いに産んでもらって良かったな」 「違っ……如月を……馬鹿に、するな……」 「俺は本当のことを言っているまでだ」 「う、ぐ……うぅぅっ」 (こんな男の言うことなんてっ、聞いてはいけないのに……! どうして私はこんな変態的なことで気持ち良く……わ、私……私はぁっ……)  神嶽の指摘は司をひどく狼狽させていた。  大切なものを盾に脅されているから、仕方なく従っているというのに。  日を重ねるごとに淫らになっていく肉体は、無情にも己の首を絞め続けている。 「さ、そんな卑しいお坊っちゃまにぴったりのご褒美を差し上げましょうね」  反論できずにいる司に笑いかけ、鷲尾が容器を彼の口元に持ってきた。無論、その中には司がひり出したばかりの精液が並々と入っている。 「あ、ぁ……そんな……嫌だ! 嫌だ、嫌だ嫌だ……! そ、そんなものを飲むなんて人間のすることじゃない!」 「お前が嫌だと言うなら別の人間を攫って来てやらせるまでだ。誰がいい、そのぐらいの希望は聞いてやるぞ」 「っ──ぁ、ぐ……卑怯……者っ……」  そう言われてしまっては、司に抵抗は許されない。  迫り来るどろりとした液体を前に、化け物を見たかのように激しく息を乱し、容器を傾けられれば、拒否反応を起こす舌を無理やりに突き出しながら啜るしかなかった。  また自分のせいで犠牲が増えてしまう罪悪感にはどうしても勝てなかった。  憎悪に燃える瞳から涙が後から後からこぼれ、汚物と混じってはそれさえ口の中に押し込めていく。  しかし、無理だった。胃に溜めていた精液までもがせり上がり、まとめて吐き出した。嚥下するよりも吐く量の方が多く、器を空にするばかりか、中身はどんどん増えていってしまう。 「何をしている、残さず飲み干すんだ」 「はひイィッ……ハァーッ……わかっで、いる……飲、むぅ……おッ……おぉええ゛っ……」  こうなれば逆流を止めようにも止まらない。精液は鼻にまで回って噴き出し、白目を剥きそうになっている。  なのに、一刻も早く終わらせたい一心で、司は死に物狂いで飲み下していく。  それは極めて異常な光景であった。  孤立無援の中、ここまですれば、司の口から『お願いですから許してください』と惨めな懇願が飛び出すものと思っていた会員達。  しかし、司の強固な精神力だけは、彼らの予想をも遥かに上回っていた。  もっとも、神嶽と鷲尾は驚くに値しないような様子であったのだが。 「相変わらず意地を張ることだけはお得意ですねぇ。ふふふ、皆様もこれくらいでは物足りないでしょう、さぁどんどんいきましょう。今宵の宴は全て飲ませるまで終わりませんよ」  歓声を浴びながら、鷲尾がまだまだ減ることのない白濁をシリンジに溜めていく。 (ここは……地獄だ……)  朦朧とする意識の中で、司はこの世の深い闇を思い知ったのだった。

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