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如月司編14-5 ※神嶽×司+隼人、ダブルフェラ

 互いに舌がぶつかっても、もう嫌そうな顔は見せない。  むしろ絡めるようにして、互いの唾液を逸物に混ぜ込みながら、自身をここまで快楽漬けにした男を絶頂させようと懸命に摩擦を続ける。  今や二人の愛撫は互角だった。 「んんぅ……つかふぁ……お前も……学園長のチンポ……おいひぃよなぁ……?」  だが、フェラチオに酔いしれた隼人が漏らした言葉が、ふっと司の理性を呼び戻すきっかけとなった。  だらしなく表情筋を緩ませて阿呆面を晒しながら舌を突き出す隼人が、司にはまるで自分より優位に立ち、嘲笑っているかのようにさえ見えたのだ。 「んくぅっ……! ずりゅっ、ずぞぞぞっ!」  ついつい、司の負けず嫌いも表れてしまった。  自分だって頑張っていると認められたいような気になって、思い切り食らいついて激しくバキュームした。  そうしたことで、ほんの僅かな差であるが、射精の決め手となったのは司の方であった。  神嶽はうっとり頬擦りする隼人を引き剥がし、司の顔に向けて精を放つ。  遂に勝負の決まるその時が来て、二人はあっと声を上げて驚いた。 「司、お前の勝ちだ。俺がわざわざ仕込んでやっただけある。上手かったぞ」  神嶽はそう言って司の頭を撫で、健闘を讃えた。飾らない言葉でまっすぐに褒められ、司はハッとして神嶽を見上げた。  褒められ慣れない彼には、どうしてか憎い相手からの賞賛も新鮮なものがあった。  しかし、敗者である隼人の顔に絶望が浮かぶのを見ると、司の表情も曇る。 「あ、ぁ……さ、西條……違うんだ、私は……」  どうにか言い訳を紡ごうとするも、先に声を荒げたのは隼人だった。 「そ、そんなっ……卑怯じゃねぇかよぉっ! オレは司と違ってまだ上手く出来なくたって当然なのにっ! がっ、学園長、まさかこれで終わりじゃないですよね? まだ挽回のチャンスくらい、ありますよねぇっ!?」  神嶽に縋るが、相手にしてもらえないとわかるや否や、必死の形相が司を捉えて肩を掴み揺さぶる。 「司ぁっ! なんで加減してくれないんだよっ! いつもいつも涼しい顔してそんなにオレを蹴落としたいのかよっ! なんでオレばっかりこんな目に遭わなくちゃいけないんだよおぉぉ……!」  隼人はそのまま顔を伏せ、わあっと泣き出した。  今になって神嶽が説明の際に言った「負ければ不特定多数の奴隷に堕ちることになる」という言葉の恐怖がついてきたのだ。  か弱い少年には、神嶽一人の奴隷となるならまだしも、見ず知らずの男達にまでその身を売るなど悪夢でしかない。 (な……何故だ……? 私は、私なりにお前を助けようとしたのに……。お前は……私がどうなっても、何とも思わないのか……?)  無様に涙を流す隼人を前に、司は唖然とした。  録音データを聞いても、それは神嶽のような凌辱魔が不幸にも身近にいたせいであって、隼人の証言自体は何ら関係がないと無理矢理に納得させた。  仲が悪かったとはいえ家族ぐるみの幼なじみとして、長年切っても切れない関係であった情は捨て切れなかった。  どうにかして助けてやりたいと、願わくば自分が犠牲になってやろうともした。  それなのに。 (どうしてなんだ……そんなに……私のことが嫌いなのか……? 私の何がお前をそこまで……)  今の司には、隼人が自らを棚に上げて被害者面をしているようにしか見えなかった。 「……ふんっ、それでも勝負は勝負だろうが。今さら負け惜しみなど……お前がそこまで醜い男だなんて思いもしなかった」  往生際の悪い隼人に、司は汚いものを見るような目を向ける。  自他共に認める犬猿関係である以上は、司も隼人のことは己と対になる優秀な男と思いたかった。  なのにこんな風に弱い男の為に必死でやりたくもない性奉仕に耐え、悩み苦しんでいたのかと思うと、怒りや虚しさも通り越して、呆れてしまった。  司が泣きじゃくる幼なじみを無の表情で見つめているのを、神嶽は興味ありげに視線をやった。 (…………結局、皆自分が大切なのか。父さんも母さんもお前も、体裁ばかり気にして。私のことなんて誰も見てくれない……私がしてきたことは……何だったんだ……)  戸惑う司の繊細な心が、自ら新たな扉を開く自問自答に陥ったことが、神嶽には手に取るようにわかった。 「さて。隼人、宣言通り敗者は不特定多数に奉仕する奴隷として今後一生、その身を売ってもらうことになる」 「ひっ、ひぃっ……!?」 「司、お前も来い。負けた者がどうなるか見届けるんだ」  逃げ腰になる隼人を、神嶽は強く押さえ付けて言う。 「見届ける……だ、なんて……な、何をするつもりなんだ」  神嶽がまた恐ろしい思い付きをしたのではと顔を引きつらせる司の耳元で、神嶽は「殺しはしない」とだけ囁いた。  今宵は隼人もまた、悪しきクラブへと誘われる。

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