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如月司編15-4 神嶽×隼人、ピアッシング、鷲尾×司

 数多の凌辱を受けたとはいえ、司は隼人のように身体を傷付けられることはなかった。  愛する父親には殴られているというのに、殺したいほど憎い男にはまるで壊れ物を扱うかのようなスキンシップを図られているなどとは、なんたる皮肉だろうか。  しかしその神嶽は今、別の男とまぐわっている。彼と自分との違いは何であるのか。  考えても考えても、答えは出ない。 「ふふ、幼なじみが犯される姿を見ていたら、あなたもたまらない気分になってきたのでは? さ、そろそろ俺達もお楽しみといきましょうよ」 「なっ……!?」  鷲尾が艶かしく司の耳に熱い吐息を吹きかけた。と言っても、無論彼の気紛れではなく、初めから神嶽に命令されていることである。  司は隼人の頭の傍らに両手をつかされた。ピアッシングの拷問に苦しみ、そしてマゾの愉悦に悶える隼人の顔を見下ろし、鷲尾に尻を突き出す形になる。  鷲尾はその尻たぶを掴み、司の股間に取り出した熱い肉棒を擦り付けた。太ももで挟ませて緩く腰を振り、素股の刺激を味わう。  このクラブで数え切れないほどの肉体関係を持たされた司であるが、鷲尾のようにまだまだ慣れない男との行為は嫌悪感の方が色濃い。 「ひっ……! ぁぐっ……お、お前! こ、こんな勝手な真似をしてっ、ただで済むと……!」 「勝手? 酷いなぁ。俺が神嶽様に無断で奴隷に手を出すような人間に見えます?」 「司、お前はそこでそいつに抱かれていろ」 「な…………っ」  司は一瞬、神嶽の言ったことが信じられなかった。  凌辱魔と幼なじみの性交を見ているだけでもとても耐えられないのに、自分はその前で別の男に犯されようとは。  いつだって不気味であったが、司は更に神嶽という男が何を考えているのかわからなくなった。  鷲尾は「そういうことですので」と笑って、前戯もそこそこに司の大事な肉穴をズブズブと割り裂いていく。 「くぅうううっ……! うぐっ、くふ、ハァッ……」 (学園長……どうしてこんなことまでさせるんだ……お前はいったい、私をどうしたいんだ……?)  司は鷲尾に突かれながら神嶽の顔色を伺った。けれども、彼は感情の一切を浮かべもしなかった。  亀頭に開けたばかりの穴には、まるで家畜にするようなリング状のピアスが取り付けられた。  ひとまず今日やるべきピアッシングが終わり、神嶽は隼人の血液や大量に噴き出した汗を拭ってやると、手袋を外した。  そうして、具合を確かめるように銀色に光る胸のピアスの表面を撫でる。 「うぐぅ! さ、触らないでくれっ、駄目っ、ぁああっ……!」  僅かな刺激でも反応を見せる隼人だが、触れるか触れないかくらいのソフトなタッチで辱められていると、だんだんと苦しがらなくなってきた。 (あ……あれ……おかしいな……? あんなに辛かったのに……なんだか、前より敏感になってるような……あはは……オレってば、痛すぎて頭おかしくなっちまったのかな……)  隼人の考えもあながち間違いではない。限界を超えた苦痛に脳内麻薬が大量に分泌され、感覚を麻痺させて痛みを和らげている。  だが、それが快感に直結するかといえば、それはまた別の話だ。 「ど、どうして、ぇ……オレっ……気持ちいいの……? えぐっ、えぐうぅ……」  感じていることを自覚してしまえば、もう止まらなかった。  やはり戻れないところまで来ていた。惨めにその身を性欲処理に使われる奴隷として、堕ちてしまっていたのだ。  隼人を支配したのはこの上ない絶望と、同時に湧き上がる高揚感だった。 「さ、西條っ……? ああ、西條……わたし、は……っ」  明らかに様子の変わった隼人に、司も困惑を隠しきれない。 (西條……お前、もう何もかも駄目になってしまっているんだな……。だったら……私も──)  司の握り締めた拳に力がこもる。  背後から激しく揺さぶられ、司も理性が吹き飛びそうな中で、ひゅうっと大きく息を吸い込む。 「……いいっ……! 私も、チンポ入れられただけで気持ち良くて……! た、たまらないっ……! なのにお前はそんなっ……猟奇的なことで気持ち良くなるなど……! なんて恥知らずな男っ! ありえないっ、心の底から軽蔑するぞこの屑がっ!」  司が言い放つと、隼人のペニスはビクビクと震えた。  それはあまりの激痛によるものだったが、司の言葉に答えたつもりだと思ったのか、興奮を抑えられず叫ぶ。 「お前はいつもいつも自分のことばかりでっ! 私の気も知らないで言いたい放題だっ! 勉強もスポーツもできない訳じゃないくせにっ! 何より、お前のことを大切に想ってくれる優しい家族がいる……それで十分じゃないか!? 私のどこがそんなに気に入らない!?」  司は彼と過ごした学園生活の全てを思い起こした。  一度口に出してしまっては、もう止まらない。長年の思いの丈を全て隼人に向けぶち撒けていく。 「私はっ! お前が思う以上にっ! お前がっ……羨ましかったのに……!」  ずっと反論したかった心情を吐露する司の目からは、ひとりでにボロボロと大粒の涙が溢れていた。  本当は成績や見栄などどうでもいいから、隼人のように伸び伸びと好きなことをして生きたかった。  努力すればしただけ自分のことのように褒めてくれる両親が欲しかった。  価値観を共有する兄弟だって欲しかったのだ。  世の人間が憧れを抱く、全てが手に入ったような環境にいる司が最も疎ましさを感じていたのは、いつも対極にいた幼なじみ、隼人だった。

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