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託と別れた後、1週間経っても2週間経っても呼ばれなかった。
日ごと不安が募る。
やっぱり僕は用済みなんだろうか。
一度も褒められたことなどなかったのに、褒められた。むずがゆい気もするけど、あれがもし最後だからだったら?
お仕置きもされなかった。見限られたんだろうか。いつもうまくできないから。
ひざまずくのも、お手も、フェラも、手でしごくのも、足を舐めるのだって。
託が見ている前で自慰をやらされたこともあった。
あの時は恥ずかしくて死にそうだった。
中学の頃、自分だってうまくできないくせに、下手だと言って何度も口でやらせた。ただ託の苦しそうな顔が見たかっただけだ。あの顔を見ながらでイくのが気持ち良かった。
今託にあんな顔をされたら、苦しいだけなのに。
本当はただ普通に一緒にいたかった。
託がいずれ女に取られてしまうと思うと怖かったのだ。男である自分を好きになってくれるはずがないと。
だから、無理矢理口でやらせて、手に入れた気になって。そんなのはまやかしなのに。
今になってわかる。
託に何をされてもいいから呼んで欲しい。仕事をして、ただ寝に帰るだけの毎日がむなしく過ぎていった。
自分から連絡するなんてできなかった。
これ以上待ったら、自分が何をするかわからない。
3週間目。ついに我慢できなくて、カッターで自分の腕を切りつけてしまった。いくら傷を付けたからといって、Sub性が満たされるわけでもないのに。こんな目立つところに傷をつけたらまずい。長袖で隠れるとはいえ、もうすぐ夏だ。
託に見つかったらもっとやばい。
いや、そんなことないかと僕は思いなおした。どうせもう呼ばれるわけがない。
そう思ったら、もっと血が見たくなった。どうしよう。自分を止められる気がしない。
そうだ。こんな時は薬だ。
第2性 を抑えるための薬、抑制剤が市販されていたのを思い出した。特殊な薬だから普通のドラッグストアには置いていない。
前に行ったDom/Subのプレイ場の中で買えたはずだ。
副作用がひどいと聞くけれど、これ以上待っていたら指を切り落としたくなる。手の甲にナイフを突き立てたくなる。
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