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 店の近くまで来たら、声をかけられた。 「何やってんの?」 「託」  こんなとこで会うなんて。最初に会ったのもここだったけど、それから一度もここには来てなかった。 「まさかプレイする人探しに来た?」 「違うよ。そうじゃなくて」  薬の話をしたら、怒られるだろうか。 「鈴也、これ何?」 「ちょっ、待っ」  袖をまくられた。  まだ真新しい傷だ。おとといやったばかりで、ごまかしようがない。 「何、やってんの?」 「だって」  言い訳などできない。 「自分でやったの?」 「あ、あ……」  声が出ない。怖い。 「何も、やってない」 「鈴也!」  詫に腕を掴まれた。 「大丈夫だから。薬買いに来たから」 「は?」 「今までありがとう」 「何言ってんの?」 「だって最後だったんだろ」  もう呼んでくれないのなら、託の側にいることはできない。  他にプレイする人を探すのだけは絶対嫌だった。  Subなんかでなければ、第2性(ダイナミクス)なんてなければ、僕が普通だったら、側にいられた? いじめなんかしないで済んだ? 「馬鹿じゃないの」  託は怒ったように言った。 「勝手に来ればいいじゃん」 「だって、呼ぶって言った」  こんな言い方をしたら怒られる。そう思って一瞬目を伏せたが、何も飛んではこなかった。 「ずっと待ってたの?」  答えられなかった。 「ドロップしたのに俺がいいの?」 「へ?」  ドロップ? した覚えはない。  僕は突如ひらめいた。ああ。だからか。やけにこの前優しかったのは。急に褒めたりしたのは。何だ。そんな理由だったんだ。  僕は胸が苦しくて、つらくて、張り裂けそうで、立っていられなかった。  ついその場でしゃがみ込んだ。 「ちょっと鈴也?」 「ごめん。弱くて」  ドロップなんて最悪だ。 「ごめんなさい。役に立たなくて」  Subとしても側にいられない。自分は本当に役立たずだ。 「いい加減にしてよ」  詫に怒られるのも当たり前だ。 「やめてよそういうの」 「ごめんなさい」 「謝るのも」  何も言えなくなった。 「プレイしてあげるから」 「え?」  僕は耳を疑った。 「傷つけんのやめて」  託は僕の腕の傷を見ていた。 「ごめんなさい」  謝っちゃだめだったのに、つい口にしてしまった。 「だから」  託が顔をしかめたので、慌てて言い直した。 「あ、ありがとう」 「そんなことで喜んで馬鹿みたい」  託は僕から目をそらし、僕の腕を引っ張って状態を起こした。そのまま引っ張られる。  電車に乗り、詫の家まで連れてこられた。  3週間ぶりの託の部屋だった。 「セーフワードはこの前決めた通り」 「うん」 「おすわり」  プレイ開始の合図だ。 「舐めて」  と言われたのは手だった。いつもは足なのに。  何でだろう。  託の手は細長くてきれいで、ゴツゴツして指が短い自分の手とは違う。  自分にはもったいない。  喉の奥に手が当たって、何故か恍惚とした。  舌を這わせていたら、つい甘く噛んでしまった。 「あっ」 「悪い子」  やばい。お仕置きだ。  鞭が飛んでくると思ったのに、今日はフェラだった。  いっぱい練習したんだから今日はうまくできるはず。  託は「気持ちいいよ」と言ってくれて、僕の口の中で達した。  躊躇なく飲み干すと、「よくできました」と言われた。  頭の中がふんわりと心地良くなる。そんなのは初めてだった。

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