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立ち上っていたものはすっかり萎えてしまった。
もうしてくれなくなるかもしれない。何であのタイミングで昔のことをわざわざ思い出してしまったのか。自分の馬鹿さかげんに嫌気がさした。
託が部屋に戻って来たときには片手にカップを持っていた。
自分が裸だったのに気付き、慌てて服を着た。
「はい」
渡されたのは温かいココアだった。うれしいのに、何故だか悲しくなった。
一口飲んだら何故か泣けてきて、ぽろぽろと涙をこぼしてしまった。
「何泣いてんの?」
「ごめんなさい」
託に困った顔をさせている。そんな自分がつらかった。
「嫌なんじゃないのに」
託の顔がまともに見られない。一口ココアを口に含んだ。
「おいしい」
僕のために入れてきてくれたのだとわかって申し訳なくなった。
「鈴也?」
託に顔を覗き込まれ、僕はつぶやいた。
「僕、だってそんな資格ない。優しくしてもらう」
託は盛大にため息をついた。
「もうやめない?」
「え?」
プレイをやめるのかと早とちりをした。
「そういうの」
「ごめんなさい」
託に見捨てられるのが怖くて反射的に謝ると、それも止められた。
「謝るのも」
「だっ」
口を開こうとしたら、唇を塞がれた。あてられたのが託の唇だと気付き、驚いた。
「落ち着いた?」
何でキスするの?
「昔のことでぐじぐじ言うのやめて」
「ごめっ。あっ」
すぐに謝ってしまう弱い自分が嫌になる。
「やめないともう会わないから」
そんな風に言われ、どうしたらいいかわからなくなった。
「託」
「そんな顔しないの」
頭を撫でられ、くすぐったくて、また泣けてきた。
「もう。やだ」
泣きたくなんかないのに。
「鈴也」
「もう言わない。気を付ける」
託に会えなくなるのは嫌だから。
「もっと言いたいこと言ったら?」
言いたいこと?
「我慢しないで」
そんなこと言われても困る。
「また明日」
「うん」
感情的になりすぎた自分が恥ずかしい。とにかく帰って頭を冷やさないと。
託の家を出てため息をついた。
また来てもいいんだよね?
もっとちゃんとしないといけない。
まだ慣れないけれど、託のどんなプレイも受け入れようと思った。
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