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 公園を出て歩いていたら、ふと前の方を歩いている人影が気になった。まさか託? 後ろ姿が似ている。  中学校の方に向かって歩いているようだ。つい後を付けてしまった。  その人影は、中学校の入口で止まり、しばらく校舎を見ていた。  その後、突然踵を返して僕の方に向かって来た。やっぱり託だ。  やばい。気付かれる。そう思って急いで歩くが、焦って少し躓いてしまった。  相手との距離を確認しようと後ろを振り向くと、 「鈴也?」  と声をかけられてしまった。  仕事だと言っていたのに。嘘をついたのがバレてしまう。  託は僕の前に近付いてきた。 「何でいるの?」 「その、つまり、」  言ったら嫌な思いをさせるかと思って黙っていたが、こんなとこで偶然会うなら最初から言えば良かったと後悔した。 「ごめん」  託は僕を見てため息をついた。 「帰ってたの?」 「託の方こそ」  用事としか聞いていないのだから、実家に帰るなんて知らなかった。 「俺に気遣って言わなかった?」 「うっ。ごめん」 「謝るなって言ったよね」  また墓穴を掘ってしまい、無意識で後ずさった。 「何でここ来たの?」  託が自ら中学校に来るなんておかしいと思って聞いてみた。 「中学校嫌じゃないの?」  そしたら聞き返された。 「鈴也は?」  答えられるわけなくて、うつむいてしまった。 「罪悪感とか、懺悔とか、そんな理由でプレイしてるわけ?」  顔を上げられない。託の言うことはいつも頭の片隅にあったから。 「答えないんだ」 「託」  いざとなったらコマンドで口を割らせることもできるのに。それをしない。いっそそうしてくれた方が……。  そう思って愕然とした。そんな考えはずるい。 「託はどうして。恨んでないの?」 「恨んで、蔑んで、蹂躙してほしいの?」  唇に唇が近付いてきて、軽く噛まれた。 「託」  痛いけど、それより心が苦しい。 「それで罪悪感をごまかそうとしてるわけ?」 「違う」  違うんだ。もちろんゼロじゃないけど、ただ一緒に、側にいたいだけで。  口にすることができない。拒絶されたら、断られたらそこで終わってしまう。 「託じゃないと、他の奴嫌だ」  そんなこと言っても仕方ないのに。 「鈴也」  つい託に抱きついてしまい、涙まで出てきた。  お願い。見捨てないで。  口にできない言葉が涙となって流れていく。  背中をポンポンやられた。

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