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 落ち着いたら恥ずかしくてなって、託から慌てて離れた。  喉がからからで、涙まで出して、少しふらっとした。 「大丈夫?」  腕を掴まれた。  いつの間に大きくなったんだろう。  普段はあまり立って並ぶことがない。  自分より背が高い託のたくましく引き締まった体を見ていると、変な気持ちがわいてくる。  ごまかすために言った。 「飲み物持ってくるの忘れちゃって」 「自販機あるよ」 「財布も忘れたから」 「これ飲む?」  託が渡したのは飲みかけのスポーツドリンクのペットボトルだった。 「ありがと」  あまりにも喉が渇いていて、ごくごくと勢いよく飲んだらむせてしまった。 「ベタすぎて笑える」 「ごめっ」  何やってんだろう。恥ずかしい。  間接キスだったのに気付いてまたおかしな気持ちになった。  さっきだって唇に触れた。一体どうして? 託の顔をまともに見られない。 「何考えてんの?」  からかうように言われた。 「口つけた」 「へ?」 「さっきも」  唇を噛まれた。 「からかうのやめて」  託はきっとふざけてやってるだけだから。 「からかってないけど」  託は涼しい顔をして言った。 「託?」 「向こう帰ったらまた」  託はそれだけ言って僕に背を向けた。  なんとなく寂しくなって、つい服を掴んでしまった。 「鈴也?」  託に振り向かれてごまかすように言った。 「な、何でもない」  ふいっと横を向いて火照った顔をごまかすしかなかった。  自宅に帰って仕事に復帰し、いつも通りの日常に溶け込んでいく。  プレイも今までと変わらないはずなのに、どこか気もそぞろだった。  意識しすぎてしまうのだ。  キスされる頻度も上がっている気がする。  プレイの一環だとわかってはいるけれど、このまま託の側にいることが当たり前になっていったら、自分はどうなってしまうんだろう。  この気持ちに気付かれないように、まだこのままで。そう願わずにはいられなかった。
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