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 託は終わった後少し苦しそうな顔をしていた。 「無理させてごめん」 「大丈夫。僕の方こそ他のDomに従ったりして」 「鈴也が悪いんじゃないけど」  託は悲しそうな顔をした。 「よく我慢したね」  託は僕の頭を撫で、抱きしめてくれた。うれしくてほわほわとした気分になった。 「寝よっか」  深夜もだいぶ遅い時間。三時を越えていた。  託に抱きしめられながら眠りについた。今日だけはこのままでいたかった。  託は朝になっても起こさないでくれたから、僕が目を覚ましたのは11時も過ぎていた。  ダイニングテーブルに行くと託はほほえんだ。 「朝ごはんせっかく作ってくれたのに冷めちゃった」 「気にしないで。よく寝れた?」 「うん」 「良かった」  どうして託は優しくしてくれるんだろう。パートナーでもないのに。  鮫島が最後に言ってた言葉が頭から離れない。  首輪しとけよという言葉。  託はまだ首輪(カラー)をくれない。パートナーじゃないから。  託は僕をパートナーにしたくないのだろうか。  朝食を食べ終えた後、つい口から出てしまった。 「首輪(カラー)が欲しい」 「え?」 「パートナーにして欲しい」  託は困った顔をした。やっぱり駄目なんだと思った。 「ねえ、鈴也わかってる?」  託は射貫くように僕を見た。 「パートナーになるってことは」 「え?」  そのことに気付いて顔から火が出そうになった。パートナーになる2人は、クライムという契約をするのだけど、慣例としてセックスすることになっていた。  もちろん必ずしも絶対ではない。ただ、パートナーになるのはそれぐらい重い。男女なら普通でも、男同士ではなかなかそうはいかない。パートナーとは別に結婚相手がいる場合もあるが、かなり稀な例だった。 「そういうのは好きな人としなよ」  好きな人? そんなの、そんなの託しかいない。  僕はこうなったら言ってしまおうかと思った。  でも、もし拒絶されたら? やっぱり怖かった。 「そんな人いないから、託がいい」 「鈴也!」  託は少し怒ったようだった。 「託はいるの? パートナーにしたい人」 「さあ」 「いるんだ」 「何も言ってないけど?」  託は否定しない。 「今までありがとう」 「ちょっと、鈴也?」 「僕もパートナー探すから。心配しないで」

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