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仕事終わりに会社を出たところで鮫島に腕を掴まれた。
「考えてくれました?」
もう考える必要もなかった。
「無理だから、仕事やめる」
「は? あんな奴のために仕事やめる? 馬鹿言ってんじゃねえよ」
いつも以上に口が悪い。
「もう僕に構わないで」
鮫島という男が嫌いだ。Subを見下していて、何でも思い通りになると思い込んでる。たとえ託がいなくても願い下げだ。
「ふざけん」
「ふざけてんのはあんたの方」
託? 何でここに? 僕は驚いて声が出なかった。
「全然大丈夫じゃないじゃん。ちゃんと言ってよ」
託に迷惑かけたくなかったから、言えなかった。
「でも、振り払えたのは偉いよ」
頭を撫でられ、くすぐったくなった。
「てめえ、おとといからふざけ」
「だからふざけてんのはあんた」
託は鮫島の腕を捻って突き飛ばした。
「鈴也、行こう」
強い。託ってこんなに強かったっけ?
僕は鮫島を一瞬ちらっと見たが、すぐに託に引っ張られて託の家まで連れて行かれた。
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