33 / 47

11-1

 託の家に入ったら託に怖い顔をされた。 「仕事やめるってどういうこと?」 「え?」 「言ってたでしょ」  聞かれていたのかと思った。 「それは、その……」  託に言ったらやばいと思ったのに。 「あいつが、自分に従わないと上司に言ってやめさせるって」 「はあ?」 「託」  もっと怒った顔をした託に困った。 「何で鈴也がやめる必要があるの? おかしいのは向こうじゃん」  もちろんそれは僕も思ってた。でも仕方ないんだ。 「Subだから、仕方ないんだ。どうせ逆らえないから」 「そういうの犯罪だって知ってた?」 「え?」 「無理矢理コマンドを使うのはレイプと同じ犯罪だよ。あまり知られてないけど」 「そうなの?」  そんなの知らなかった。  託はため息をついた。 「でも、ノーマルの人がそんな事実知らないことが多いから、ほとんどは泣き寝入りだけど」  託はDomとSubの動向にも詳しいみたいだった。 「ちょっとできがいいだけで調子に乗って嫌な奴」 「あの、託?」  託の目が怖くて、恐る恐る話しかけた。 「今日はどうする? 月曜だから、やめとく? でも、明日仕事休んだ方がいいんじゃない?」 「うん。プレイしてくれるの?」 「何で? したくないの?」 「だって僕」  パートナーにして欲しいと迫った手前、普通にプレイしていいのかわからなかった。 「パートナー契約する?」 「え?」 「仮でいいなら」 「仮?」 「東京都の条例で届け出ることできるようになったんだよ。だから首輪(カラー)も買って」 「だって契約(クライム)には」 「だから仮。別に拘束力があるわけじゃない。いつでも解除できる。ただ、他のドムの牽制にはなるから」  託が言ってくれたことは素直にうれしかった。でも、本当にそれでいいのかと迷った。 「もうちょっと考えていい?」 「別にいいけど」  普通に軽くプレイをした。足を舐めるだけの簡単なプレイ。しかし、鮫島の足をスリッパごと舐めさせられたのを思い出して途中で気持ち悪くなった。 「鈴也、大丈夫? 顔真っ青。やめよう」 「やだ。やめたくない」 「鈴也!」 「あんなの忘れたい。託に上書きしてほしい」  託は「よしよし」と言って頭を撫でてくれた。 「じゃあもうちょっと続けようか」  託の手が僕の口の中に入ってくる。自分の舌や喉奥を撫でられているような感じがして気持ち良かった。  口に入ってるから声が変になるけど、反応してしまった。 「鈴也口の中でも感じてる」  そんなこと言われて恥ずかしくなった。 「顔真っ赤」 「託!」 「青くなったり赤くなったり忙しいね」  僕は託の方を向けなかった。  プレイが終わってもしばらく顔が火照ってた。

ともだちにシェアしよう!