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12-1
12月になって、プレイの後託の家に泊まった時、年末年始は実家の方に一緒に帰らないかと誘われた。
夏休みは別々に帰ったのに結局会ってしまったから、気まずかった。
託は僕と一緒に帰るの嫌じゃないんだろうか。
「そういえば託って高校どこ行ったの? 地元じゃなかったよね?」
ふと思って聞いてみた。
「ああ。都内の私立高校に。地元の高校行きたくないって言ったら、親に下宿していいって言われて、親戚の家にお世話になってた」
全然知らなかった。中学卒業してから託を見なかったのはそのせいだったのか。
「それって僕たちのせいだよね」
詫をいじめていた苦い記憶がよみがえってくる。
「まあそうだけど、かえって良かったけどね。大学進学についても熱心な学校だったし」
託は結構な偏差値の国立大に行ったようだから、やっぱり僕とはできが違う。
「そういえば鈴也も高校で第2性の検査受けた?」
「あ、うん」
「でも、その前からわかってたんでしょ?」
それを聞かれると非常に困るのだった。中学の時から嫌で嫌で仕方なかった。今はさすがに受け入れるしかないと思っているけど、Subだなんて気付きたくなかったのだ。
「頭では嫌だと思ってるのに、託に従いたいって自分の奥から湧き出てくるんだ。それが怖くて、ずっと見ない振りをしてた」
「俺がDomだってすぐわかったの?」
「わかんないけど、なんとなくそうじゃないかって。他の奴らには何も思わないのに、託に命令されるとぞくぞくっとして。気持ち悪かった」
「全然わかんなかった。鈴也は自覚が早かったんだね」
託は軽く言うけれど、僕はそのせいで託に余計な劣等感を抱いて、いじめなんかしたんだから、何も言えなくなってしまう。
「鈴也?」
「何でもない」
託は気にせず話を続けた。
「高校で俺だけ別の部屋に通されて説明を受けたんだけど、全然ピンとこなかったんだ。自分の目からグレアが出てるとかさ。親に聞いてみたらわかってたみたいで」
「え?」
「うちの両親DomとSubなんだよね。父さんがDomで母さんがSubなんだ。ってのも高校の時知ったんだけど」
そうなんだ。
「鈴也の家はそういうのないの?」
「ないよ。両方ともノーマルだし、多分理解されないと思う」
「そっか。だからかもね」
「何が?」
「相談できる人誰もいなかったんでしょ?」
「うん。まあ」
高校の検査でもやっぱりと思っただけだ。認めたくないものでも、突きつけられると、認めざるを得なくなる。
絶対に誰にも知られたくなかった。だから、誰にも言えなかった。
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