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第3話 一人だけが浮いている一家団欒

 初めての『家族四人』の団欒の夕食。  ダイニングのテーブルには母さんの作ったご馳走が並んでいる。 「うわ。すげー美味しい。母さんって料理上手なんだね。父さんと二人の時は出来合いの総菜ばっかだったから、なんか感動するっていうか」  律は母さんの手料理がいたく気に入ったようで、旺盛な食欲を見せている。 「そんなふうに言ってもらえると、とてもうれしいわ。だって、陽くんは何を作ってもおいしいの一言も言ってくれないのよ。張り合いがないったら」  母さんの言葉に僕は顔が引きつるのを感じた。 「まあまあ、陽子さん。陽馬くんは照れ屋なだけなんだよ」  優しい父さんはフォローしてくれるけど、母さんは尚も続ける。 「でも、作ってる者としては、おいしいの言葉がやっぱり欲しいものなのよ。ね、律くん」 「はい」  にっこりと母さんに笑いかける顔は、どこまでも端整で、容姿だけを見れば、正直とても好みなのだけど。母さんと律が早くも母親と息子としてしっくりなじんでいるのを見せつけられて少々悔しい気持ちが先に立つ。  律は明るくて、華やかな雰囲気を持ってるし、誰をも惹きつけるオーラもある。  ……それに比べて僕は……。  陽馬という名前に似合わず、暗い性格だし、引っ込み思案で。  確かに母さんの作ってくれる料理においしいの一言も言ってあげたことがなくて……。  あ、なんかすごく落ち込んで来た。  僕は何とかそこでマイナスの思考をストップさせると、花の形にカットされたニンジンのソテーを口の中に放り込んだ。  僕だけは少々浮いていたものの和やかな夕食を終え、僕は自分の部屋へと戻って来た。  自分だけのお城と言ってもいいそこに入るとホッと気持ちが落ち着いた。

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