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第15話 不可解
漢字のテストはいつもよりも難易度が高かった。
現国の教師は答案用紙を返すとき、「平均点は四十点にも満たなかったぞ」と渋い顔をしていた。
そんな中、僕の点数は九十八点。クラスで断トツのトップだった。
「おい、陽馬、百点近い点数とっておきながらその浮かない顔は何だ?」
僕が答案用紙を前に溜息をついていると、学が絡んで来た。
「俺なんか三十八点なんだぞ。そりゃ陽馬はいつもの定期テストでも学年トップだけどさ。
……どうした? 陽馬」
「え?」
「なんか心ここにあらずっていう感じだからさ。そういえばここ最近、おまえ様子変だよな。何か悩んでいることでもあるのか? 俺で良かったら聞くぜ?」
一瞬、僕の脳裏に律の顔が浮かんだが、まさか自慰の指導を受け続けているのだなどとは言えるはずもなく。
「ありがとう。何でもないよ。ちょっと最近勉強頑張りすぎてるのかも」
僕が誤魔化すと、心優しき友達は元気づけるように誘ってくれる。
「陽馬は頑張り屋だからな。……よし、今日の放課後はいつものハンバーガー屋で気分転換しようか? カラオケでもいいし、とことん陽馬につき合うぞ」
「学、僕とばかりつるんでいたら、できたばかりの彼女にフラれちゃうよ?」
学は最近、隣町にある女子高の彼女ができたばかりだ。
リア充になった親友に置いて行かれたような寂しさは少しあるけど、彼の恋を邪魔する気はないので、僕は誘いを遠慮した。
それでも何となく真っ直ぐに帰る気になれなくて、一人でハンバーガーショップに入った。
窓際の席に座り、ぼんやりと人混みを見つめていると、一際目立つ姿が目に飛び込んで来た。
律である。
この辺りで律を見かけるのは、もう数えきれないくらいで、その度に彼は違う女の子(それもみな美女ばかりだ)を連れていて、今日もまた違う女の子と腕を組んで歩いている。
僕は律が女の子といるのを見る度に複雑な気持ちになった。
律はいったい何を考えているのか。
僕に触れて来る律。
僕にとっては平常心ではいられないあのことも律にとっては何でもないことなのかな。
あんなふうに自慰の指導をすることに律は何の抵抗もないの?
律は僕を何だと思ってるんだろう?
でも、結局は律にあの行為を許してしまっている自分自身が一番不可解で。
僕は、輝くようなオーラを振りまき、道行く女性の視線を集めまくっている律から目を逸らした。
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