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第19話 律のおねだり

 なんだか律に置いてけぼりを食らったような……いや、最初から律と肩を並べているなんて思ってないけど。でも……。  律の瞳に魅入られながら考えていると、彼はその目を細める。 「……なあ、陽馬、前から頼みたかったんだけどさ」 「え? な、何?」  身構える僕に、律は困ったように笑いながら言った。 「眼鏡、取ってくれないか」 「は?」  眼鏡を取る? それは想像だにしないおねだりだったが。 「や、やだ」  僕の顔は律と違って、どこもいいところがなく垢ぬけない。  そりゃその事実は眼鏡をしててもしていなくても、変わらないことだけど。  今まで律の前では眼鏡を取った顔を見せたことなどないので、なんとなく抵抗があるのだ。 「今更眼鏡を外すくらい何でもないことだろ? 俺はおまえのオナニーの先生で、おまえのイキ顔まで知ってるんだか――」 「わーっ……」  僕にとっては恥ずかしくてたまらないことを言われ、僕は折れた。  渋々ながらも律の言う通り眼鏡をゆっくりと外す。  完全な素顔を律に見られたくなくて、僕がうつむいていると、律はのぞき込むようにして見つめて来る。  思わず顔を隠そうとする僕の手をとめて、律が呟く。 「やっぱ、おまえの目すげー綺麗だ。黒目がおっきくて」 「は?」  僕の目が綺麗? 律は何を言ってるんだろう?   予想外のことを言われ、戸惑っていると、素早く両方の目元にキスされた。

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