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第20話 ファースト・キス
「な、何するっ……」
「んー? あんまり綺麗だから、俺のものだって言う所有済みのキスをね」
「…………」
いったいどんな顔をして、こんな台詞を言ってるんだろうか……?
半ば呆れて律の方を見ると、彼の薄茶色の瞳とぶつかった。
僕は思う。
綺麗なのは律の瞳の方じゃないか。
薄茶色の瞳に見惚れていると、律がそっと僕の頬へ触れる。
「……陽馬は、まだ原石の状態だよな。磨けばうんと綺麗になると思う……でも、おまえはこのままでいいかな」
そして、その言葉を紡いだ形のいい唇がゆっくりと近づいて来て……僕の唇と重なった。
さんざんやらしいことはされてるけど、キスをされたのは初めてだった。
勿論僕のファーストキス。
すぐに律の唇は離れて行ったが、僕は戸惑いのあまり、律の顔を凝視してしまう。
「……そんな見んなよ。俺、理性は蜘蛛の糸よりも細い自信あるんだから……」
律はそう言うと再び僕の唇にキスをした。
初めてのキスは触れるだけのものだったが、今度のキスは違った。
律は唇を強く押し付けて来て、啄むようなキスを繰り返したあと、舌で僕の唇の輪郭を舐めるようにたどっていく。
「……っ……んっ……」
僕は両手で律の胸を叩き、抵抗したが、やがてそれも弱々しくなってしまう。
きっと律はキスも上手いんだと思う。
少し開いた僕の唇の間から口内へと律の舌が入り込んで来た時には、僕はもう律のキスに溺れていた。
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